修繕とリサイクルの違い
朝日新聞 硬式球リサイクル事業に注目 大場元新庄北監督が発案
山形県新庄市で始まった、高校野球などの硬式球のリサイクル事業が注目を集めている。傷んだ練習球を再生することで、球代が節約でき、産廃としての処理費も浮く。福祉作業所などに作業してもらうことで、新たな雇用も生み出している。
傷んだ球の皮をはがし、糸を巻いて大きさを調整して、新しい牛皮を張り合わせたうえ、糸で縫い合わせる。すべて手作業だ。
1球230円で回収は無料(送料別)。
美談にけちをつけるようで恐縮ですが、興味深いテーマですので、取り上げてみます。
論点は2つ
1.野球部で使用したボールは産業廃棄物か?
2.ボールの修繕行為は、廃棄物処理業に当たるのか? です。
野球部のボールは産業廃棄物?
まず、1のボールは産業廃棄物かどうかですが、
廃棄物が産業廃棄物となる条件は、
「事業活動に伴って発生したもの」と「政令で定める定義に該当するか」の2つです。
「事業活動」というのは、企業活動のような営利活動のみに限定されず、非営利活動も含まれてきます。
従って、野球部の活動も「事業活動」になります。
では、「政令で定める定義に該当するか」ですが、
記事にもあるとおり、ボールは糸の塊に牛皮を巻いたものですので、
廃棄物処理法施行令第2条の定義にあてはまるものがありません。
従って、ボールは事業活動から発生したものですが、産業廃棄物ではなく、「(事業系)一般廃棄物」になります。
正確に言うと、新聞記事の内容は誤りとなります。
ボールの修繕は廃棄物処理行為に該当するのか?
今回取り上げられているケースは、ボールのリサイクルではなく、修繕が本旨だと思われます。
修繕は再利用が前提である以上、ボールの所有権自体は野球部が保有しているため、廃棄物には該当しません。
従って、廃棄物処理行為には該当しない、と言いたいところですが
そう断定するには判断材料が足りません。
A校のボールは修繕後A校のみに返し、B校のボールはB校のみに返す
という場合なら、修繕行為に該当すると思います。
しかし、まずは使用済みボールをA校40球、B校40球、C校30球と合計100個回収し、
A校には、A、B、C校のボールが入り混じったボールを20球売る
というケースでは、修繕というよりも、再生させたボールの販売という方が正確です。
このケースでは、ボールの所有権が一度放棄された状態となるため、その時から廃棄物となります。
修繕は、1球ごとのボールのすべてに所有権が残っている状態ですが、
「新品状態のボールを買うので、古いボールを引き取ってくれ」という場合は、ボールに関する所有権が放棄されています。
記事ではこのあたりの詳細な仕組みが触れられていないので、
修繕なのか、廃棄物処理なのかが判断できません。
もし、私にアドバイスを求められたとしたら、
「使用済みボールは加工用材料として、運賃を上回る価格で買取りをしましょう。」と答えるところです。
こうすれば、野球部はボールに関する所有権を放棄しますが、材料としての販売になりますので、廃棄物に該当しないことになります。
ただし、そんなことをしていると、事業として成り立たないだろうと思います。
運賃と売価の差し引きで廃棄物か有価物かを判断する、現在の行政運用では、このような壁にぶち当たります。
そろそろ、このような画一的な判断ではなく、もう少し柔軟な運用がなされるようになると良いのですが。
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2012年2月7日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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