問題は需要の量

厄介者の廃棄物を製品原料と変えるリサイクル技術2件のご紹介です。

中日新聞 廃棄物貝殻で陶磁器用粘土

 産業廃棄物だった貝殻を粉末にして粘土に混ぜることで、家庭のオーブンでも簡単に陶磁器が作れる魔法の土「貝粘土」が完成した。開発したのは瀬戸市孫田町の窯業原料メーカー「瀬戸製土」会長の谷口良治郎さん(81)。産廃の貝殻を活用できる上、低温で焼き上がるため燃料費も20分の1で済む。陶土の倍近い価格がネックだが、関心を集めそうだ。

 きっかけは東京で昨年2月にあったギフトショー。参加した谷口さんが、岡山県浅口市の商工会のブースで足を止めた。気になったのは、特産である藻貝のつくだ煮ではなく、横にあったその貝殻。「これは粘土に使える」と感じ、その場で「貝殻をもらえないか」と掛け合った。

 谷口さんはホタテガイと粘土、トウモロコシ樹脂でつくる次世代粘土「アイコーン」を開発した実績もある。軽くて割れにくいとして、2005年の愛・地球博(愛知万博)で納入された商品だ。

 貝粘土は、藻貝の貝殻55%、粘土30%、トウモロコシを原料とした樹脂15%で構成される。「貝殻の汚れが入ると製品が黒くなり、塩分が入ると土に粘り気がなくなる」といい、白さを維持するために編み出した技術は「企業秘密」だ。

 焼き上げる温度は150度。一般の陶磁器は1200~1300度なので、必要なエネルギーは極端に少ない。溶けた樹脂がつなぎ役になるためだ。また、低温で焼くため化学変化が起きず、土中に埋めれば5年ほどで土に返るという。

 貝殻を提供する水産加工会社の六車正憲さん(58)も、「貝殻は処理にも費用がかかり、活用方法を模索しているところ。きれいな陶器にしてもらえることは、こちらとしてもありがたい」と話し、双方に利点がある。

 まだ値は張るが「需要が高まれば、もっと安くなる。いかに広めるかが今後の鍵」と谷口さん。「家庭でも焼けるし、愛好家には陶芸がもっと身近になる商品」と自信をみせている。

廃棄しても土に返るというのが最大のポイントですね。

焼き上げの温度が低くて済むのも魅力です。

しかしながら、素材として有望なことがわかったとしても、貝殻をコンスタントに一般家庭に買ってもらうのは非常に難しいと思われますので、教育機関や自治体との連携が不可欠となります。

神護寺(京都)や比叡山は、「かわらけ投げ」ができる場所として有名ですが、かわらけ投げを各地の寺社で行うようにすれば、貝粘土の需要はもっと増えると思います(笑)。

日本経済新聞 廃棄コンクリやアスファルト、自然な砂に再生 ハイナン

 解体工事・廃棄物処理のハイナン(静岡県牧之原市、畑設司社長)は、コンクリートとアスファルトの塊から再生砂を製造する技術を開発した。自然砂に近い色合いで、透水性が高く固まりにくいのが特徴。公共事業が減少するなか、新たな収益の柱に育てて、2014年6月期には環境事業の売上高を10年6月期より2割増やしたい考えだ。

 開発したのは、粒の大きさが10ミリメートル以下の規格「RC―10」を満たす再生砂。解体現場で出るコンクリート塊とアスファルト塊を原料とする。同じ原料を再利用する「再生砕石」の製造ノウハウを応用。粉砕機に何度もかけた後に配合し、自然乾燥して製造する。再生砂はサラサラとした手触りで、天然の砂に似たまだらな灰色をしている。

 従来の再生砂は瓦やれんが、陶磁器が主原料だが、「赤茶色で廃棄物と誤解されやすく、施工業者があまり使いたがらない」(福世建次郎取締役)という。環境負荷が小さいことをPRし、自然砂の代替品として県中西部の土木工事業者へ売り込む。

 上下水道管や地中電線の緩衝材、管路敷設工事の埋め戻し材として使用できる。こうした用途では「水道管破裂など不具合箇所が分かるように透水性があり、掘り返しも楽な素材が求められる」(福世取締役)。

 コンクリートとアスファルトの理想的な配合比を割り出し、自然砂との比較実験を重ねて、緩衝効果や水はけが自然砂と同じ程度になるようにした。

 価格は1立方メートル当たり2千~3千円と「自然砂とほぼ同じ」(畑社長)で、再生砕石と比べると約3割高いが「利益率が高く、生産量が増えれば採算は合う」という。畑社長は「公共事業の減少で再生砕石の価格競争は厳しい。再生砂の需要は増加が期待でき、地域のシェアをいち早く固めたい」と話している。

薄利多売に耐えられる経営状況であるならば、この新製品も将来有望になるかもしれません。

この製品の問題は、技術が革新的であるわけではなく、手間を砕石製造以上にかけなければいけない点。

「利益率が高い」と言えるのかは、個人的には疑問です。

ただし、国内と外国の自然砂が枯渇するような状況になれば、再生砂の価値が一気に高まりますので、それに備えた準備としては有り得る戦略なのかもしれません。

リサイクル技術を開発すること自体は簡単ですが、その技術で作られた製品の需要があるかどうかは別問題。

民間企業が手掛ける以上、リサイクル後の製品の需要が有るかどうかが根本的に重要です。

社会環境の変化が速い現代では、昔は有望であった需要が技術開発前に消失することがよくあります。

その逆に、廃タイヤのように昔は需要がなかったものに対し、急に需要が増えるようなケースもあります。

技術開発自体は重要ですので、積極的に開発をしていくべきですが、その技術と企業の命運を心中させるような投資は危険と言わざるを得ません。

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