震災廃棄物処理特需とその反動

需要があるところに供給が集まること自体は、合理的な経済活動です。

毎日.jp がれき:県外業者、参入相次ぐ 不法投棄や暴力団関与警戒

 東日本大震災の被災県に、県外の廃棄物処理業者の進出が相次いでいる。宮城、岩手両県で計約2050万トンに上るがれき処理が見込まれ、事業拡大の動きとみられるが、岩手県の担当部署では、「自治体の紹介状がある」として唐突に入札情報を求められることもあった。警察の警戒情報もあり、行政や専門家からは、悪質業者の参入や不正処理を懸念する声も聞かれる。

 岩手県資源循環推進課には昨年度、一般・産業廃棄物処理施設(処理能力1日5トン以上)の設置許可申請が殺到した。件数は通常の10倍の100件超で、半数が県外業者という。同課の担当者は「取りあえず申請したという業者もあるかもしれないが、これほど多いとは」と驚く。

 岩手県では震災がれきの9割の約420万トンを県内で処理する計画。最終処分場を東北に持たない県外業者も、移動式の破砕機などを使えば、中間処理を担うことは可能だ。同県大船渡市に昨年8月に支店を出した大阪府内の廃棄物業者は「震災の支援にもなり、大きなビジネスチャンスでもある」と話す。

一般廃棄物と産業廃棄物の処理施設の設置許可申請が100件超というのは、かなり多いと言わざるを得ません。

関連する行政書士や環境測定会社は大儲けしたことでしょう。

大阪でこのような数の新規許可申請をするのは用地の問題があって事実上不可能ですが、
岩手県は県土が広いだけあって、都市計画の範囲となっていない土地が多いのだろうと思います。

震災廃棄物処理を効率的に進めるためには、岩手県内の施設の処理能力を増強するのが最善ですが、
問題はその処理が終わった後です。

この勢いで施設が増え続ければ、数年内に岩手県内の震災廃棄物処理の目途は立つと思われます。

その時に、雨後の筍のごとく急増した廃棄物処理施設群は、需要に対して供給過剰の状態になります。

経済合理的に、「震災廃棄物処理が終わったから岩手県から撤退します」という業者ばかりなら問題ありません。

移動式破砕機という、比較的簡単に許可が取れる安価な施設を選んでいるということは、撤退までを視野に入れた投資なのだとも思います。

しかし、人間の大部分はそれほど合理的に行動できるわけではありませんので、多くの処理施設が震災廃棄物処理後も岩手県に残り続けることになる可能性は高いと思います。

そうなると、ランニングコストだけでも捻出するために、安値で廃棄物処理を受注することが横行し、不法投棄も激増することになります。

廃棄物処理施設の設置許可は、更新する必要がない永久ライセンスですので、一度で出た許可は行政処分で取消されない限り、ずーっと保持し続けることが可能です。

行政の立場としては、出された申請に技術上の問題が無ければ、設置許可をしなければなりませんので、許可期間を短くするなどの工夫ができないところも悩ましい点です。

岩手県に進出した処理業者が、進出の時と同じくらいに、ドライに撤退のタイミングを判断できるところばかりであると良いのですが。

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コメント

  1. さくパパ より:

    今回の内容とは、関係がありませんが、
    来週の先生のセミナー、受講します。
    宜しくお願い致します。

    楽しみにしています。

  2. 尾上雅典 より:

    さくパパ様

    ありがとうございます。当日お会いできるのを楽しみにしております。


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