スイスの廃棄物処理状況

ドイツの廃棄物処理事情は各種レポートで語られることが多いものですが、スイスの廃棄物処理事業について語られることはそれほど多くはありません。

今回は、その貴重なレポートのご紹介。

swissinfo.ch スイスのごみ処理事情

2010年にスイスで排出された一般廃棄物は1人当たり707キログラムで、欧州連合(EU)の平均を4割上回っている。しかし模範的な処理と適切なリサイクルを行うことでごみ処理は利得をもたらすビジネスになりつつある。

 瓦礫から象の糞(ふん)まで、輸送費用が経済的である限り、リサイクルが可能な全ての物質に対する需要がある。

 スイスにはごみ処理に従事する企業が650社あり、年間2千万トンのごみを元手に利益を得ようとする企業間の競争は激しくなる一方だ。

Wikipediaによると、スイスの人口は7,568,000人ですので、日本のおよそ16分の1。

スイスで2千万トンの廃棄物が発生するということは、日本の感覚で言うと、2千万トンの16倍の3億2千万トンというところでしょうか。

日本の場合は、産業廃棄物だけで年間およそ4億トン発生していますので、スイスの方が人口当たりの廃棄物発生量は少ないと確実に言えます。

記事では、「スイスの廃棄物処理企業の競争は激しくなる一方」と書かれていますが、2千万トンを650社で分けるとすると、1社あたり約3万トン。
仮に、年間稼働日数を300日とすると、1社の取扱量は1日あたり100トンとなります。

日本で日量100トンの処理能力というと、そこそこ以上の必要十分な処理能力です。

そう考えると、スイスの廃棄物処理市場は、日本よりも相当余裕があることになりますので、まだまだ新規参入の余地があると言えそうです。

この状況を示しているのが、記事のこの部分だろうと思います。

 廃棄物管理は今やグローバルビジネスとなり、ヴェオリア(Veolia)、ローカー・リサイクリング(Loacker Recycling)、レモンディス(Remondis)などの大手多国籍企業もスイスに進出している。

その他、スイスに特徴的な点としては、「焼却処分に対する合理的な接し方」を挙げたいと思います。

焼却の利点

 2000年1月1日に施行された法律のひとつに、可燃性廃棄物の埋め立て地への持ち込み禁止がある。燃やせるものは燃やさなくてはならない、というのがスイス式考え方なのだ。現在、一般廃棄物の5割は、スイス国内29カ所にある焼却炉で処理されている。残りは分類され、別々に収集された後に、再利用される。

 環境局によると、ごみを焼却することで汚染物質の排出が抑えられ、資源を守ることにつながるという。さらに廃棄物の体積は9割も減るという。

 州や自治体が所有・運営する焼却炉に対し、フランスやアイルランドなどでは反対する人が多いが、スイスでは景観やシステムの一部として認識されている。

 全ての焼却施設には灰や埃を通さない静電気フィルターが設置されている。こうしてフィルターにたまった灰や埃のほとんどはスイスで処理されるが、残りはドイツに輸出され、有害廃棄物保管のための特殊装備が施された岩塩坑で保管される。

焼却炉が景観の一部として認識されているというのは、建設位置の決定、設計、環境アセスメントなどのすべての工程において、首尾一貫して景観配慮を重視し続けなければ達成できない結果です。

スイスでは、焼却に対する「合理的な姿勢」と、景観配慮というポリシーを堅持し続ける「頑固さ」が、相反することなく共存しています。
これこそが、スイスを現在のスイスたらしめた最大の理由なのではないでしょうか。

感情面への対応を最優先するという「情緒性」と、その場その場で対応をコロコロと変える「(悪い意味での)柔軟性」が相乗効果を発揮している日本と比べると、スイスの方が魅力的に見えるのは私だけでしょうか?

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