石原産業元役員に巨額の賠償命令

7年前に大規模リサイクル偽装事件を起こした石原産業。

各地で違法に埋立てたフェロシルトを撤去するために、489億円という巨額の経費が必要となりました。

違法な行為の穴埋めのために、会社の利益489億円が吹っ飛んだ計算になります。

そのことで不利益を被った同社の株主が、フェロシルトの販売などに携わっていた当時の役員などに対し、撤去費用などを石原産業に支払うことを求める訴訟がありました。

6月29日に大阪地裁で、当時の役員ら3名に対し485億8400万円の支払いを命じる判決が出されました。

NHKニュース(動画付き) 不法投棄 485億円賠償命令
日本経済新聞 石原産業元役員らに485億円賠償命令 フェロシルト不法投棄

日本経済新聞の記事は、簡易明瞭に他の事例も含めた解説がなされていますので、記事を一部引用します。

 大手化学メーカー、石原産業(大阪市)による土壌埋め戻し材「フェロシルト」の不法投棄事件で、会社に損害を与えたとして、株主3人が当時の取締役ら21人に対し、回収費用など489億円を同社に賠償するよう求めた株主代表訴訟の判決で、大阪地裁は29日、元取締役ら3人の責任を認め、ほぼ全額の485億8400万円の支払いを命じた。

 株主代表訴訟の賠償額としては、旧大和銀行の巨額損失事件で7億7500万ドル(当時のレートで約830億円)の賠償を命じた大阪地裁判決(大阪高裁で2億5000万円で和解)、蛇の目ミシン工業の元社長らに約580億円の支払いを命じた東京高裁判決に次ぐ高額とみられる。

今回は廃棄物処理法ではなく、会社法の解説ばかりになります。
訴えを提起した株主にお金が入るわけではなく、元取締役が会社に対して損害賠償をしていくことになります。

ただ、上場企業の元役員とはいえ、1人あたり100億円以上の蓄財をしているわけがありませんので、全額を支払うことは事実上不可能と思われます。

株主代表訴訟が提起された段階で、何らかの資産防衛策を取っているはずですので、賠償はなおさら困難かと思います。

しかしながら、上場企業の重役として、功成り名を遂げた人生の終幕に、このような不名誉な訴訟を提起され、会社への裏切り行為と断じられるということは、大変大きな苦しみを味われたことと思います。

 フェロシルト担当取締役だった元社長(72)と元工場長(死亡、遺族3人が訴訟継承)についても、同社が定めた品質管理システムに沿って製品が開発されたかを確認しなかった過失などを認定。「有害物質を含む廃棄物と認識しながら、安全性を確認したり、出荷を中止したりする義務を怠った」とし、50~20%の賠償責任を負うとした。

たとえ、役員だった人が死亡したとしても、刑事事件とは違い、元取締役個人に対する債権となる以上、遺族にまで迷惑をかけることになります。
事件とは無関係の家族まで巻き込むことになりますので、取締役の「善良なる管理者としての注意義務」を常に励行する必要があります。

取締役になった人はこの注意義務を果たしていないと、いつ何時株主から訴訟を提起されるかわからないということになります。

企業における法務の役割の重要性を再認識させられるケースです。

 石原産業の話 認定金額の大きさは問題の重大性を表すと認識しており、教訓を生かし、経営改革に取り組んでいく。

最後に、石原産業側のコメントが掲載されていますが、どことなく他人事のような軽さが感じられます(苦笑)。

「改革」とか「教訓」という、どことなく無責任な言葉ではなく、
違法行為を繰り返さないためのガバナンスシステムなどを自発的に公表することが、事件を引き起こした当事者の責任なのではないでしょうか。

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