「漁師が海にゴミを捨てる」時代

毎日新聞に漁師による海洋へのホタテ貝殻の不法投棄事件が報じられていました。
不法投棄:むつ湾内にホタテ養殖の貝殻2トン 容疑の12人を摘発 /青森

 ホタテ養殖で出た貝殻約2トンをむつ湾内に不法投棄したとして、青森海上保安部は2日、青森市と蓬田村の漁業者12人を海洋汚染防止法違反の疑いで摘発したと発表した。全員容疑を認めているという。海保は捜査を終了次第、青森区検に書類送検する方針。

 摘発されたのは、青森市油川大浜、漁船「恵漁丸」(6・1トン)を所有する同市漁協理事(69)ら12人。

 海保によると、恵漁丸など計10隻は6月1〜8日、ホタテの選別作業で生じた貝殻などの残さ計約2トンを、油川沖や蓬田村沖に不法投棄したとしている。5月に住民から「漁師が海にごみを捨てている」との通報を受け、取り締まりを行った。

 09年6月には、今回摘発された12人のうち5人を含む計6人、6隻が同様に油川沖で貝殻約1・4トンを不法投棄したとして送検されている。

「漁師の自殺行為」と、不法投棄をした実行犯のモラル退廃で片付けるのは簡単ですが、それだけでわかったつもりになるのは危険です。

漁師が自分の職場である海に、貝殻とはいえ、大量の廃棄物を不法投棄するというのは、モラル退廃以上に、漁業全体の構造的問題があると考えた方が良いと思います。

このあたりの問題を、専門家の立場からわかりやすく解説してくれている記事がありました。
三重大学 生物資源学部 准教授の勝川俊雄さんのブログ
漁業の生産性が上がらない構造的な理由

勝川准教授の記事では、漁業の生産性を上げる上での障害として、

1)魚価をあげるのは難しい
2)漁獲量を増やすのは難しい
3)経費を下げる余地は無い

の3点が挙げられていますが、

今回の不法投棄事件は、3)の「極限まで進められた経費削減」をさらに進めるための所業と言えそうです。

もちろん不法投棄は違法行為ですが、漁業で利益を生み出せる構造にしない限り、全国各地でこの手の事件はこれからも起こりそうです。

「起こりそう」というよりは、「既に起こっているが、地域で問題視してない」ということなのかもしれません。

これからの日本では、デフレが進む一方で、消費税の増税が決定的となるなど、生活コストの増加を甘受せざるを得ない情勢のようです。

漁業従事者の生活確保、そして漁業全体の振興のためにも、魚の価格が高くなることもいずれは避けられなくなりそうですね。

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