穴に廃棄物を入れただけ≠不法投棄?

読売オンライン 産廃1・2トン不法投棄の男「穴に入れただけ」

 神奈川県警横須賀署は3日、横須賀市上町、無職K(69)、同市林、トラック運転手O(65)の両容疑者を産廃物処理法違反(不法投棄)の容疑で逮捕した。

 発表によると、両容疑者は共謀して4月14日、同市西部の空き地に穴を掘り、コンクリートや木くずなど約1・2トンを不法に捨てた疑い。K容疑者が関係する同市内の飲食店など3店舗の内装工事で出た廃棄物を、K容疑者がO容疑者に指示して捨てさせたという。

 K容疑者は「穴に入れただけで捨てていない」、O容疑者も「頼まれてやっただけ」と容疑を否認している。

容疑者の言い分としては、
穴に入れただけ=不法投棄に着手していない=未遂
と言いたいのだろうと思いますが、

不法投棄の場合は、未遂であっても刑事罰の対象になりますので、やはり罰せられることになります。

「穴に入れただけ」という抗弁自体は珍しいものですが、
広い意味では「投棄ではなく一時保管」という言い訳と同じ趣旨になりますね。

判例ではありませんが、
環境省から以前出された 行政処分指針 に

廃棄物を不法投棄現場に定着させるべく、身体、道具又は機械等を用いて、廃棄物を投げる、置く、埋める又は落とすなどの行為に着手した時点で、不法投棄の実行の着手があったものとして、不法投棄未遂罪に該当するものと解されること。具体的な行為類型としては、不法投棄現場において、ダンプカーの荷台操作等の一連の投棄行為を始めた直後に、警察官等による制止、監視等に気づいたことによる行為の打ち切り、ダンプカーの故障等の理由により、実際には廃棄物を投棄するに至らなかった場合等が考えられること。

というものがあります。

今回の事件では、穴に廃棄物を置く、あるいは落とすまでが行われていたようですので、環境省が示す未遂の要件にあてはまります。

その一方で、「仮置き」という主張が認められた実例もありますので、簡単に概要をご紹介しておきます。

2012年の1月頃に、多摩川の土手の工事現場で発生したがれきを埋立てた建設会社の社員が逮捕されましたが、
このケースでは、「期間を明示した仮置き」であることを示す保管計画書が、発注者の市に事前に提出されていたため、逮捕された社員は不起訴となりました。

ただし、このようなケースが合法的に成立する条件は非常に厳しいものと言わざるを得ませんので、
「計画書を出せばいつでも廃棄物を埋立てられる」と、安易に解釈されないようにお願いします。

繰り返しになりますが、このような仮置きが認められるのは非常にまれです。

穴を掘って、そこに廃棄物を置くという行為は、不法投棄とみなされるのが一般的で、後にご紹介した事例でも、最終的には不起訴になりましたが、顔写真付きで逮捕報道が当初はなされましたので、非常にリスキーです。

「李下に冠を正さず」という言葉もありますので、他者から疑われやすい行動は極力避けるべきですね。

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