ヘキサメチレンテトラミン騒動後始末 Vol.3

※関連記事
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今回は、どんなHMT規制が望ましいかを書きたいと思います。

そもそもHMT規制は必要なのか?

個人的な意見としては、HMTを特出して規制することは必要ないと思っています。

それは「規制の必要性が無いから」ではなく、「現行の廃棄物処理法の規制で十分だから」です。

HMTなどを処理する際に関わってくる条文としては、
「廃棄物処理基準」と「委託基準」があります。

今回のDOWAハイテック社の流出事件は、「委託基準」違反に該当するか否かが争点になりました。

環境省を含めた行政の見解では、「委託基準違反には当たらない」という結論になりました。

その根拠は、「廃棄物処理法では、個別の化学物質に関する注意点を契約書に明示する義務はないから」というものでした。

私の考えでは、この理屈は全面的に正しいとは言えないと思っています。

その理由は、廃棄物処理法施行規則第8条の4の2に、委託契約書の法定記載事項として


 ヘ その他当該産業廃棄物を取り扱う際に注意すべき事項

と定められているからです。

このように抽象的かつ概括的な条文になっているのは、
「個別に化学物質が限定列挙されていないから違法性を問えない」という言い訳をするためではなく、
「排出事業者自身に処理責任を徹底させる」ことにあるはずです。

しかしながら、
1.排出事業者自身が化学物質の危険性を認識しておらず、
2.通常の状況下では起こり得る危険性を予測することが困難な場合
にまで、上記の「取扱注意事項」が書かれていない責任を追及するのは酷というものです。

ただし、DOWAハイテック社は、9年前に自らHMTを流出させ、同じような断水事故を起こしていますので、
上記の1と2の両方にあてはまらず、施行規則第8条の4の2の法定記載事項として、「取扱注意事項」を明記する義務があったと考えるべきではないでしょうか。

もっとも、上記の1と2の判断基準は、私の個人的な考えにすぎませんので、オーソライズされたものではありませんが、事故や不法行為の際の過失責任の考え方を踏まえたものですのが、まったくの独断と偏見に基づく基準というものでもありません。

ここで、私の個人的な見解の弱点を書いておくと、
それぞれのケースごとに、行為者自身の知識・経験を個別に判断して過失責任の有無を判断するというのでは、法的な安定性を欠きます。

DOWAハイテック社以外がHMTを流出させた場合、その会社が危険性を認識していなければ、今回と同様に違法性を問えないからです。

どのように規制するべきなのか?

そこで、今後二度と同様の事故を発生させないためには、やはり法令の条文をもう少し具体的な表現にした方が良いということになります。

その意味では、環境省が検討会を設置して、具体的な検討を始めたのは正しい行動です。

ただ、当ブログでも何度も触れたように、
「水質汚濁防止法の指定物質にする」、あるいは「WDSガイドラインに注記する」だけでは、規制の実効性は乏しいと思われます。

どちらも、委託者である排出事業者の処理責任を直接的に規制するものではないからです。

「WDSガイドライン」は、あくまでもただのガイドラインであり、それを無視したからと言って罰則の対象になることはありません。

ここはやはり、HMTが塩素と結びついた場合の危険性が明らかになったことを踏まえ、
1.廃棄物処理基準を改正して、HMTの放流を禁止する
2.委託契約書の法定記載事項に、HMTの取扱注意点を書くことを義務付ける
3.HMTやその他の化学物質をひっくるめて、望ましい処理方法を告示する

などの対策を取り、HMTの放流などを具体的に禁止するべきではないでしょうか。

根本的な解決を図るのであれば、
HMTを含む排水は放流禁止とするのが一番わかりやすいと思われます。

排出事業者や処理業者の意識や注意力のみに頼った規制では、結局誰も責任を負わないこととなりますので、ここは一つ、環境省には簡明な規制をお願いしたいものです。

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