ヘキサメチレンテトラミン騒動後始末 Vol.2

ヘキサメチレンテトラミン騒動後始末 Vol.1 の続編です。

ヘキサメチレンテトラミン騒動後始末 Vol.1では、HMT規制の今後の予定に関するマスコミの勇み足を解説しました。

今回は、HMT規制の有効性に関する考えをまとめたいと思います。

HMT規制の目的

HMTを規制するそもそもの目的は、同様の事故、具体的には浄水場でのホルムアルデヒド生成を二度と起こさないことです。

「そのためにどうするべきか」を、検討会において懸命に検討されたわけですが、
検討会の出した結論は、
1.水質汚濁防止法の指定物質にHMTを追加
2.WDSガイドラインにHMTに関する注意点を追記
というものでした。

環境省が施策として行う以上、基準が適用される範囲を明確にしないといけませんので、上記のようなアプローチになるのも仕方がない面があります。

しかし、上記のような回りくどい、あるいは実効的ではない規制を増やせば増やすほど、規制に関する事業者の鋭敏性は失われていき、いずれ同様の事故が発生します。

回りくどい規制が有害な理由

それはなぜか?

何のためのルールであるかが不明確な規制では、形式的な順守を当初のみ引き出せたとしても、順守を何度か繰り返すうちに、慣れや慢心が支配するようになり、組織内に弛緩が必ず生まれるからです。

水質汚濁防止法の指定物質に追加されたとしても、実質的には事故時の応急措置や行政への報告等が義務付けられるだけであり、排水方法や設備の基準がかけられるわけではありません。
そのため、環境担当者に人事異動を繰り返すうちに、事故の教訓が忘れ去られ、同じ事故が起きる素地が作られていくことになります。

ちょうどDOWAハイテック社が、9年前の事故の教訓を忘れ、処理業者への不適切な委託をした結果、再び河川へHMTを流出させたように・・・

誰に対する規制なのか?

この問いに対する回答は非常に簡単です。

「ハイ それはHMT使用事業者です。」と、誰でも簡単に答えられると思います。

では、HMT使用者とはどんな企業なのでしょうか?
日本の大部分の企業がHMT使用者なのでしょうか?

NPO法人有害化学物質削減ネットワークが、取りまとめた資料によると、
PRTR法に基づく2009年度のHMT届出工場は175工場で、総排出量は約6t。
廃棄物として処理されたHMTの総量は59万3千tでした。

ただし、廃棄量が多い順に工場ごとをならべると、
2009年度はDOWAハイテック社のみで51万tも廃棄処理しており、同社だけで日本全体の廃棄量の86%を占めています。

2001年から2009年までの9年間で廃棄量の多い順に並べてみると、
これまたDOWAハイテック社が、上位10工場のうち7つを占めています。
※表は、NPO法人有害化学物質削減ネットワークのサイトから転載。

事実上、日本でHMTを最も多く廃棄処分している会社はDOWAハイテック社であり、
DOWAハイテック社のみで、日本全体の半分以上のHMTを毎年処理委託していることになります。

そのため、少なくとも、当面の規制の方針を考える上では、この現状を前提として制度設計をしなければなりません。

HMT廃棄量が著しく多いDOWAハイテック社と、それほど多くない他の会社を一律に規制しようとすると、
今回の環境省の検討会のように、「広く薄く」という規制しかかけられなくなります。

それはそれで一つの解決策であるのも事実ですが・・・

次回、最後のまとめとして、「どのような規制が必要なのか」、あるいは「新たな規制は必要なのか」という視点で解説をしたいと思います。

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