日光市が民有地の廃棄物を公費で撤去

下野新聞の記事にもあるとおり、行政が民有地にある廃棄物を公費で撤去というのは、措置命令でもかけない限りは通常行われません。

観光地の景観に顕著な悪影響を与えるということで、日光市としても苦渋の決断だったのだろうと思います。

11月14日付下野新聞 鬼怒川温泉の不法ごみ 日光市、特例で撤去へ

 大量のごみが放置されている廃旅館は、1999年に閉館。その後、徐々に敷地内に廃家電やマットレスなどが不法投棄されるようになり、ここ数年急激に増え道路にあふれ出す寸前となっている。

 道路は温泉街のメーン通りの一つ。通行する歩行者、車両が多いほか、廃旅館は東武鬼怒川線の車両から間近に見える位置にあり、市議会の一般質問でも取り上げられるなど、たびたび景観上の問題が指摘されてきた。

 しかし、民有地のごみの撤去を公的負担で行うことは難しく、市側も長年対応に苦慮。

 鬼怒川・川治温泉観光協会がごみを遮蔽するための防護柵設置などの対策を講じようと、所有者と連絡を取ったが、承諾が得られないまま連絡も途絶え、民間での対策は暗礁に乗り上げた。

 このため、市は長期間、観光地の景観に重大な支障を生じさせ、近隣住民の生活環境も脅かしているとして、10月から本格的な対応に乗り出した。同月下旬には、所有者と連絡が付き、敷地内への立ち入り、廃棄物の撤去、防護策の設置について了解を得、撤去を決めた。撤去費用総額は作業してみないと分からないという。

 今後、市は民有地のごみ撤去について一定の基準を作成するという。

作業的にはゴミを撤去するだけですから、行政でも簡単に行えそうに見えますが、
大半が廃棄物とはいえ、その中には私有財産が若干含まれていることもあり、行政の独断では私有地内の廃棄物を撤去できません。

不法投棄物の撤去などが行政代執行で行われるのは、
不法投棄された廃棄物を放置すると、周辺の生活環境に悪影響を与えるため、行為者の代わりに行政が代執行するという位置づけになります。

今回の日光市のケースでは、景観には影響があるものの、生活環境には支障が無い状態に見えますので、
本来の意味での代執行には該当しないと考えられます。

近年、一人暮らしの高齢者の方がゴミをため込んでしまうゴミ屋敷の問題があり、
各地の自治体でゴミ屋敷の片づけを公費で行うことの可否が議論されています。

民有地のゴミを放置すると、そこにさらにゴミが捨てられ、景観の悪化のみならず治安の悪化につながる場合もあります。
かといって、行政が民有地のゴミをなんでもかんでも撤去というのでは、ゴミを捨てた者の得ということにもなります。

放置もできず、一斉に片づけもできないという、非常に悩ましい問題ですね。

政策法務という領域に入る重要な課題であると思います。

あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)

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