大山鳴動してネズミ一匹
5月16日付毎日新聞 福岡・旧筑穂町の産廃撤去訴訟:県、飯塚の業者に措置命令
福岡県飯塚市の産業廃棄物処分場を巡り、2012年に廃棄物撤去などを求めた住民訴訟で敗訴した県は16日、処分場を運営していた同市内の業者に対し、廃棄物の一部撤去や排水浄化を求める措置命令を出した。ただ業者は倒産状態で、撤去などの実行は県の行政代執行によるしかないとみられる。
昨年7月の敗訴確定後、県が実施した調査によると、処分場の土壌からは環境基準を超す鉛など有害物質が検出された。このため措置命令では、検出地点の廃棄物を撤去するか、有毒物が溶出しないよう処理し、廃棄物層からしみ出す浸透水の遮断・監視措置などを実施するよう求めた。今後90日以内に着手し、1300日(約3年半)で完了するよう命じている。
業者は登記上は存在するものの経営破綻状態で、実際にこれらの措置を実行するのは難しいとみられる。県は行政代執行の可能性について「可能性としては排除できないが、あくまで業者側に実行を求める」としている。
安定型最終処分場の浸透水から基準を上回る有害物質が検出されるなど杜撰な管理状況があるにもかかわらず、福岡県が適切な処分をしていないとして、近隣住民から福岡県に対し措置命令の義務付け訴訟が提起され、1審では住民側が敗訴でしたが、2審で住民側が逆転勝訴したという事件のようです。
最高裁判所の判例データベースで検索してみましたが見つかりませんでしたので、個人のブログを参照させていただきました。
「中央区を、子育て日本一の区へ」 小児科医&法科大学院生 小坂和輝のblog
産業廃棄物処分場問題 福岡県飯塚市(旧筑穂町) 福岡地判H20.2.25/福岡高判H23.2.7
裁判で敗訴したことを受け、福岡県でも措置命令を出すべく動き始めはしました。
合計5回ほど有識者による調査専門委員会を開催しています。
飯塚市産業廃棄物最終処分場に係る調査専門委員会(第5回)の開催について
飯塚市の産業廃棄物最終処分場に係る義務付け訴訟の最高裁決定を受け、事業者に対して措置命令を発出するため、当該処分場の状況調査等を実施しています。
今回、埋立区域周辺地下水の水質や廃棄物埋立区域ボーリング調査結果が全て判明したことから、結果の解析と生活環境保全上の支障について審議を行うため、第5回委員会を開催します。
専門委員として名を連ねている方は国内でも有数の研究者の方ですので、相当ハイレベルな審議検討が行われたものと思います。
しかし、数年かけて検討した結果が、ほぼ倒産状態の相手に対して、履行期間が1,300日という長期間に及ぶ措置命令というものでした。
現実的に履行される可能性が極めて低い処分です。
遅すぎた命令と言わざるを得ません。
県は行政代執行の可能性について「可能性としては排除できないが、あくまで業者側に実行を求める」としている。
とありますが、行政代執行をするしかない状況に早晩陥るものと思われます。
もっとも、措置命令がもっと早ければ業者に自主的な改善措置を採らせることが可能だったかというと、
その可能性も低かったと思います。
しかしながら、慎重に検討しすぎて実効性のない命令を出すよりは、裁判後にすぐ一定の改善措置を命令するべきだったと思います。
安定型最終処分場に関するトラブルであるため、他の自治体においても同様のトラブルが発生する可能性があります。
その時に行政はどう対処するべきか?
今回の事例は、一つの失敗事例として、他の自治体にとっては教訓とするべき題材と言えましょう。
« 小型家電リサイクル法の逐条解説(第7条) トヨタの自動車リサイクルが絶好調 »
タグ
2013年5月17日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:news