不法投棄するしかない安値受注

少々おかしな見出し記事ですが、排出事業者が誰かを考える題材となる事件でしたのでブログでご紹介します。

2013年7月11日 17:54 日テレニュース24 都の事業で不法投棄 産廃処理社長ら逮捕

 正規の業者よりも格安で解体工事を受注し、廃棄物を不法投棄していたとして、産業廃棄物処理会社の社長ら7人が逮捕された。

 警視庁によると、廃棄物処理法違反の疑いで逮捕された産業廃棄物処理会社「一鳶工産」の社長(69)や下請け業者の男ら計7人は去年7月、千葉県市原市の山林に、木くずなどの廃棄物約17トンを違法に捨てるなどした疑いが持たれている。不法投棄された廃棄物は、東京都の区画整理事業に伴うもので、都が保証金を払い、住民自身が解体を業者に発注していた。

 一鳶工産は下請け業者と組んで、正規の業者よりも格安で約200件受注し、2000万円を売り上げたとみられている。警視庁の調べに7人は全員、容疑を認めているという。

ニュースの見出しは、東京都の公共事業で発生した廃棄物が不法投棄されたかのような書き方をしています。

実態は、区画整理事業に伴う家屋の解体工事を一般住民が一鳶工産に発注し、廃棄物が不法投棄されたということのようです。
東京都の関わりとしては、解体工事業者に工事の保証金を払っていただけですね。

区画整理に伴う工事の保証金なので、東京都自身が行っている公共事業というわけではありません。

容疑者の一鳶工産の許可内容を、環境省の 産業廃棄物処理業者 検索システム で検索すると、
埼玉県、千葉県、神奈川県の3県から収集運搬業許可を受けていたことがわかります。

あえて東京都を避けている理由がよくわかりませんが、環境省のサイトに東京都の許可内容が反映されていないだけの可能性もあります。

東京都の許可の有無に関係なく、
一般住民から直接工事の発注を受け、解体工事を施工する場合は、解体業者が産業廃棄物の排出事業者となりますので、東京都内で発生した建設廃棄物を別の場所に自由に運ぶことができます。

ということは

今回の事件は、産業廃棄物処理会社による不法投棄というよりも、「解体業者による経費節減のための不法投棄」といった方が正確です。

「2,000万円の売上」という点だけを見ると、結構儲けたように見えますが、
受注件数が約200件とのことですから、1件あたりに換算すると、約10万円の売上でしかありません。

解体工事一式が10万円というのは、破格の安値です(苦笑)。

こんな値段では、犬小屋の解体でもない限り、廃棄物処理費に回す金は残らないと思います。

真面目に廃棄物処理をし続けるためには、解体業者が赤字前提でコストを負担し続けないと無理な計算です。

自社施工のみならず、下請業者も多数抱えていたようなので、中間搾取が売上の中心だったのかもしれません。

マージンの総額が2,000万円だったということならば、そこそこ儲けたと言えるかもしれませんが。

このように、今回の格安受注事件は、最初から不法投棄が前提としか思えない安値での工事受注でした。

産業廃棄物の処理委託の場合なら、委託者である排出事業者への責任追及が確実に行われますが、
今回は解体業者という排出事業者自身の不法投棄であるため、発注者である一般住民が廃棄物処理法で罰せられることはありません。
(発注者が不法投棄を指示したり、助けたりした場合は別)

幸い、捨てられた廃棄物の量が約17tということなので、
不法投棄実行者による自主撤去でも解決可能な量です。

問題が小さなうちに発覚して良かったと思います。

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