市町村の独自規制の功罪

毎日新聞 2013年07月12日 07時55分
産業廃棄物:処理施設頓挫 紀北町に損害賠償命令 津地裁

 三重県紀伊長島町(現紀北町)が1994年に制定した水質保護条例により、産業廃棄物の中間処理施設の建設が頓挫したとして、紀北町の「浜千鳥リサイクル」が町を相手取り約60億円の損害賠償を求めた訴訟で、津地裁(戸田彰子裁判長)は11日、原告の主張を一部認め、町に7307万円の支払いを命じた。

 判決によると、同社は旧紀伊長島町でプラスチックやゴムなどの処理施設の建設を計画し、1995年に県の許可を受けた。町がその直後に条例に基づいて施設建設禁止処分を下したことで、同社に重大な不利益を与えたと認定した。

 同社は96年3月、建設禁止処分の取り消しを求めて提訴し、07年に最高裁で原告勝訴の判決が確定した。しかし、訴訟の長期化で同社は中間処理施設の建設を取りやめた。

 原告側弁護士は「町側の責任が一部認められたが、実態がきちんと評価されず非常に残念」として控訴する考えを示した。一方、尾上寿一町長は「産廃施設の建設計画は実現性が無いと主張してきた。判決文をよく読んで対応を考えたい」と話した。

元々は、産業廃棄物処理施設の設置を阻止するために紀伊長島町が水道水源保全条例を制定、町内の8割に及ぶ地域(ほとんど町内全部になりますね)を水道水源保全地域に指定するとともに、事業者の設置予定施設を規制対象事業所に認定したため、設置を事実上不可能としたことが訴訟のきっかけでした。

業者側が紀伊長島町の認定処分を不服とし、その処分の取消訴訟を提起しました。
下級審では業者側の請求が棄却されましたが、最高裁で業者側の主張が認められる結果となりました。

市町村には独自条例を制定して、地域独自の実情に沿った規制を行う権限があります。

条例制定によって、全国一律の法律ではカバーできない地域特有の事情に合わせてきめ細やかな規制を行うことが可能となります。

しかし、法律以上に厳しい規制や、規制対象を広げられるかについては、法律の規制主旨と矛盾しないかなどを慎重に検討する必要があります。

紀伊長島町の条例の場合は、特定の業者の事業計画を狙い撃ちした点が問題視され、認定処分は違法だったと最高裁によって結論付けられました。

最高裁で勝訴したにもかかわらず、業者側は長年の紛争によって事業化が不可能になったとし、合併後の紀北町に損害賠償請求をしたというものです。

業者の訴えは60億円という非常に高額な損害賠償でしたが、報道のとおり約7千万円の賠償命令という結果に。

計画をとん挫させられた事業者にとっても、施設の設置阻止のみしか眼中になかった町にとっても、不幸な結果に終わってしまいました。

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