千葉市がスマートフォンによる不法投棄通報システムを構築へ

さすがはNTTコミュニケーションズ出身の熊谷市長というべきか、
他の自治体に先駆けて、スマートフォンによる不法投棄通報システムの開発という、先進的手法を実行する方針とのことです。

画像などで詳細な情報、そして正確な位置情報を簡単に通報できることには大きなメリットがあると言えます。

問題は、システムを維持管理するためのコストです。

2013/12/16 23:30 日本経済新聞 ごみ不法投棄通報システム、千葉市議会が条件付き承認

 千葉市議会は16日、市民がスマートフォン(スマホ)を使い、ごみ不法投棄などの問題を報告し解決につなげるシステムの関連予算について、付帯決議を付けた。市が導入を目指し、12月補正予算案で債務負担行為の設定を盛り込んだが、市議会が条件を付けて承認した形だ。費用対効果などについての疑問が解消されていないことなどが背景にあるようだ。

 新しいシステムは、不法投棄などを発見した市民が写真や報告文を添え投稿し、市が対応する仕組み。スマホ向けアプリや報告履歴を管理するシステムなどで構成する。熊谷俊人市長肝煎りの施策として、すでに実証実験などを進めていた。

 市は2014年9月ごろの運用開始を目指し、システムの初期投資や管理のための費用として、14年度から5年間で6600万円の債務負担行為を設定した。14年1月にもシステム事業者の選定などに入る方針。

 ただ、市議会は、同システムの導入について「全体像や基本的な考え方が、いまだ明らかにされていない」と指摘。財政状況も厳しいことから、着実な成果が得られコスト削減などにつながる仕組みを構築すると同時に、発注コスト抑制に最大限努力をはかることを要望した。

5年間で6,600万円のコストが必要とのことです。

スマートフォンのアプリケーションの制作費や維持管理費用の相場はわかりませんが、システム開発費としては妥当な水準の予算設定ではないでしょうか。

ただし、アプリケーションに必要な機能は、画像と位置情報その他ちょっとした情報のみですので、既存のアプリケーションの応用や改造でもっと安価に用意できるような気もしますが、システムエンジニアの経験をお持ちの市長発案の事業なので、きっと適正価格なのでしょう(笑)。

千葉市議会の付帯決議「財政状況も厳しいことから、着実な成果が得られコスト削減などにつながる仕組みを構築すると同時に、発注コスト抑制に最大限努力をはかること」ももっともです。

試みとして、スマートフォンによる通報システムの効果とコスト削減が可能かを検証してみましょう。

まずは「着実な成果」とは、システム導入によって不法投棄の件数か量が減少することですが、
そのような目に見える効果を期待するのは難しそうです。

通報が迅速に行われるからといって、不法投棄を断念する人はほとんどいないと思われるからです。

その一方で、正確な位置情報の収集により、ごみが捨てられやすい場所を具体的に特定し、ピンポイントの不法投棄対策を立てやすくなるという効果はあるかもしれません。

次は「コスト削減」が可能かどうか。

これは正直なところ非常に難しいと思います。

むしろ、手軽に通報ができるようになるために市当局に入る不法投棄情報が激増し、通報された場所を確認しに行く手間が増えるという、行政コスト(人件費)増加の要因になりそうです。

コスト削減につなげるためには、現在3人でパトロールしている人員を2人に減らすなどの、目に見える形で人員削減をする必要がありますが、
スマートフォンで通報可能になったからといって、市役所の人員を削減するわけにもいきませんので、コスト削減はほぼ実現不可能と考えて良いでしょう。

不法投棄の通報のみならず、市民から色々な情報を収集するための大規模なシステムに発展させられれば、千葉市全体としてのコスト削減は達成できるかもしれません。

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