改善命令違反で逮捕(兵庫県高砂市)

改善命令に違反したために逮捕されるという、ありそうであまりない事件です。

毎日新聞 2014年3月13日 廃棄物処理法違反:産廃野積み容疑、生コン社長逮捕−−県警 /兵庫

 県警生活環境課などは12日、高砂市梅井3の生コンクリート製造会社「楠建材生コン」社長(65)=同所=を廃棄物処理法違反容疑で逮捕した。容疑を認めている。

 逮捕容疑は、昨年6月、産業廃棄物にあたる汚泥(総重量約830トン)を同社の敷地内で、同法が定める2・6メートルを超えて約5メートルの高さまで積み上げたとしている。また、産廃の種類や管理者を明記する掲示板も未設置だった疑いがある。(※筆者注 廃棄物処理法が保管高さを2.6mまでと定めているわけではありません。また掲示板は未設置だった疑いではなく、未設置だからこそ改善命令の対象になりました)

 同課によると、汚泥は生コンの製造過程で排出され、数年にわたって積み上げられたとみられる。県が昨年6月に改善命令を出していたが同社が従わず、県は1月、高砂署に告発していた。

自分が所属していたから持ち上げるわけではなく、さすがは兵庫県、そして兵庫県警!と思いました。

改善命令違反は直罰の対象となっていますが、行政及び警察でも「立件が難しい」と最初から事件化(行政は告発)に消極的なところが多いのが現実です。

古くは豊島不法投棄事件を検挙したように、兵庫県警は廃棄物処理法違反を積極的に取り締まってきた歴史があります。

兵庫県警と兵庫県環境整備課が積み重ねてきた信頼と実績の成果であると思います。

さて、本筋とは異なる部分の個人的感慨を先に語ってしまいましたが、
本件の本質は、「産業廃棄物保管基準違反(第12条第2項)」です。

保管基準違反をしていただけでは直罰の対象となりませんので、警察からいきなり逮捕されることはありません。

保管基準違反に対する改善命令を出し、自主的な改善姿勢が見られない場合になって初めて改善命令違反という刑事罰の対象となります。

罰則は廃棄物処理法第26条の「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金、またはこれの併科」となっています。

改善命令違反は懲役刑の対象にもなり得ますので、決して軽微な違反とは言えません。
(委託契約書などに関する違反も第26条の罰則の対象となります)

ちなみに、2000年までは野外焼却も直罰の対象ではありませんでしたので、野外焼却を見つけても改善命令を先にかけない限り、警察は行為者を逮捕できませんでした。
もちろん、現在では野外焼却は直罰の対象ですので、現行犯逮捕される犯罪です。

兵庫県が出していた改善命令は下記のとおりです。
2013年6月25日付 兵庫県発表内容 廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反に係る改善命令について

生コン業界が不況になった時から、事業場内に汚泥を放置し始めたようです。

汚泥の処分費を捻出できなかった、あるいは経費を削減したかったという理由で、汚泥の放置を始めたのではないかと考えられます。

「いずれ儲けが出たら汚泥は搬出する。それまでの一時的な仮置きで、誰にも迷惑をかけていない」という思いが行為者にあったのかもしれませんが、
地下浸透や流出の危険性がありましたので、廃棄物を放置し続けた時点で、実は他人に迷惑をかけていたことになります。

今回は排出事業者自身による保管でしたので、自業自得という面が強くなっていますが、
これが中間処理業者による保管基準違反でしたら、排出事業者に撤去のお鉢が回ってくる可能性がありました。

いつも同じ結論で恐縮ですが、現地確認の際には、廃棄物の保管状況(多過ぎないか、置き方が危険ではないか)をキチンと確認することが非常に重要です。

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