愛知県に対し12億円の損害賠償命令(名古屋地裁)

愛知県が産業廃棄物処理施設(焼却炉)設置許可を取消したことが違法であったとして、名古屋地裁から12億円の損害賠償命令を出されました。

2014年3月13日 12時50分 中日新聞 愛知県に12億円賠償命令 産廃許可取り消しは違法

 愛知県春日井市内に建設した産業廃棄物処理施設の設置許可を県が取り消したのは違法だとして、施設を建設した遊技場経営会社「名成産業」(名古屋市東区)が県に約16億7千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、名古屋地裁であった。福井章代裁判長は「県の検査では排ガスや臭気の値がいずれも適正な方法で測定、算出されていなかった」と指摘。「取り消し処分は前提となる重要な事実を欠き、違法」として、業者の訴えを認め、県に約12億3千万円の支払いを命じた。

 判決によると、施設は産廃の焼却施設で、2004年に県から設置許可を受け、07年に試運転を開始した。県は、試運転中の検査で、排ガスや騒音などの測定値が維持管理上の基準を超えたとして、改善を命令。その後の検査でも臭気などが基準を上回ったとして、改善命令違反を理由に10年2月、設置許可を取り消した。業者側は同年12月、取り消し処分は違法だとして提訴した。

 福井裁判長は、改善命令の根拠となった県の検査は、自動車の騒音や排ガスの影響をまともに受ける場所で、測定場所として問題があったと指摘。「改善命令は違法であるから、同命令違反を理由にした取り消し処分も違法」と述べ、施設の建設費や人件費など約12億円の賠償を命じた。

 愛知県の大村秀章知事の話 県の主張が認められなかったのは誠に残念。判決の内容を十分に精査した上で、控訴に向けて手続きを進めてまいりたい。

事件の経緯がわかりにくいと思いますので、地元の反対団体と愛知県の公開情報を参照し、当該施設の設置から許可取消に至る顛末を並べておきます。

1.施設設置場所周辺の住民と最初から揉めていた背景があり、2004年4月28日付で施設設置許可は出たものの、その後の産業廃棄物処分業許可までには至らず、焼却炉を試運転している最中に、消石灰(2007.11.3)や鉄さび(2008.3.31)を周辺に飛散させるという事故が2回発生。

2.愛知県が立入検査をしたところ、排ガス中の塩化水素濃度や騒音が維持管理計画を超過していたことが判明し、処理施設の改善命令を発出。
2008年4月25日 名成産業株式会社に対する行政処分(改善命令)について

3.愛知県が再度立入検査をしたところ、今度は排ガス中の一酸化炭素濃度の超過、騒音と臭気指数が維持管理計画の数値を超過していたことが判明し、2回目の改善命令を発出。
2008年12月25日 名成産業株式会社に対する行政処分(改善命令)について

4.2010年2月15日に、愛知県が産業廃棄物処理施設設置許可を取消
 名成産業株式会社に対する行政処分(許可取消し)について

 平成21(2009)年6月に本県が、当該焼却施設の排ガスの臭気指数及び焼却灰の熱しゃく減量を測定したところ、産業廃棄物処理施設設置許可申請書の維持管理に関する計画に記載された数値を超過した。
 このため、法第15条の2の6の規定に基づく平成20年12月25日付けの改善命令に違反した。
 したがって、法第15条の3第1項第2号に規定する産業廃棄物処理施設の許可取消し事由に該当するに至ったため。

5.2010年12月に、事業者が愛知県の許可取消処分は違法として提訴

という流れになります。

事件の争点は「愛知県の取消処分が適法だったかどうか」でしたが、上記のとおり、
名古屋地裁は

裁判長は、改善命令の根拠となった県の検査は、自動車の騒音や排ガスの影響をまともに受ける場所で、測定場所として問題があったと指摘。「改善命令は違法であるから、同命令違反を理由にした取り消し処分も違法」と述べ、施設の建設費や人件費など約12億円の賠償を命じた。

と判断しました。

愛知県の2回目の改善命令の理由を見ると、

一酸化炭素濃度の基準値の超過は確かにあったものの、許可取消が必要なほど悪質な基準値超過とは思えません。

もっとも、通常なら、試運転の段階でこのような基準値超過を起こす焼却炉はほとんどありません。

消石灰を周辺に飛散させるなど、過去このプラントに大きな欠陥があったのも事実と思われます。

しかしながら、そのような事情があったにせよ、行政が許可取消をする際には、周辺関係者の圧力に流されず、公平・中立に法律への適否を判断しなければなりません。

名古屋地裁が事実認定したように、愛知県が騒音の測定場所を数値が上がりやすい場所に設定したのであれば、やはり失当であったと思われます。

そもそも、騒音は交通量や通行する車の車種の違いによって大きく変動するものです。
たとえば、救急車や消防車など緊急車両がサイレンを鳴らしながら測定地点の傍を通るだけで、騒音の測定値は跳ね上がります。

最近首をかしげたくなるような異常に厳しい行政処分が続いていますが、今回の裁判結果は、そのような大胆な行政の法律解釈に警鐘を鳴らしているように思います。

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