処理業者のマニフェスト虚偽記載に関する排出事業者の責任
当ブログ 2014年5月29日付記事 運搬終了年月日の虚偽記載で30日間の事業の全部停止処分(東京都) で既報の、事業の全部停止処分の対象となった処理業者の社長が、マニフェストの虚偽記載容疑で逮捕されました。
2014年6月6日 11:58 テレビ朝日 リサイクル業者に横流し…偽造で産廃業者社長ら逮捕
プラスチックなどの産業廃棄物を適切に処理したように書類を偽造した疑いなどで、廃棄物運搬会社の社長の男ら4人が逮捕されました。
「オオノ商事」の社長(略)(64)ら4人は、食品会社から回収したプラスチックなどの廃棄物について、中間処分業者に処理を委託したように書類を偽造した疑いなどが持たれています。これにより、廃棄物の処理費用を浮かせていたほか、回収したプラスチックなどはリサイクル業者に横流しして利益を得ていたということです。去年12月、東京都の立ち入り調査で、事務所の中から偽造した別の業者の印鑑が見つかって発覚しました。取り調べに対し、全員、容疑を認めています。
※テレビ局はすぐにニュース情報を消去するので、念のために同内容のニュースのYoutube版を張り付けておきます。
報道表現のまずい点は、上記の赤字部分、「中間処分業者に処理を委託したように書類を偽造した疑い」です。
事実としてはこのとおりなのですが、収集運搬業者には、中間処理業者に廃棄物の処理委託をする権限がありませんので、
ここは「委託者に無断で中間処理業者に再委託した疑い」と表現するべきです。
マスコミの報道とは異なり、当たり前のことですが、警察の発表内容は正確無比です。
※画像は、テレビ朝日の報道から転載。
証拠物件の他に、決算書類なども証拠として報道機関に公開されるようです。
※画像は、テレビ朝日の報道から転載・加工。
さて、逮捕された収集運搬業者の違法行為は明確になりましたが、委託者である排出事業者には何の責任も無いのでしょうか?
下記のテレビ朝日の画像を見る限り、排出事業者にも廃棄物処理法違反があったのは間違いなさそうです。
※画像は、テレビ朝日の報道から転載・加工。
画像をクリックすると、鮮明な画像を見ることが可能です。
廃棄物処理法第12条の3及び同施行規則第8条の20では、
産業廃棄物の種類ごとに管理票(マニフェスト)を交付すること
と定められていますので、バラバラの状態で置かれた廃プラスチックと金属くずという2種類の産業廃棄物を、1通のマニフェストで持って行かせることはできません。
実質的には、このマニフェストは排出事業者ではなく、処理業者任せで書かれたものと思われますが、
処理業者任せで簡単に済ましていると、自分が起こしている法律違反に気が付く可能性はゼロになります。
ただ、委託者にとっては幸いというべきか、
マニフェストの不交付や虚偽記載には当たらないため、排出事業者が今すぐ刑事罰の対象になるということはありません。
(もちろん、委託者による虚偽記載であったのなら刑事罰の対象になります)
今回のような違反の場合
東京都が委託者に対してマニフェストの是正勧告をし、委託者がその勧告に従わない場合は措置命令の対象となり、
さらに措置命令にも違反をした場合に初めて委託者は刑事罰の対象となります。
と、ここまでが法律論で、
現実的に売却可能なプラスチックであったのならば、最初から売買契約を締結した方が合理的でもありました。
運搬コストが必要なのであれば、売却先に運搬されるまでの間、収集運搬委託契約を締結し、マニフェストを交付すれば済む話です。
このように、何ら法律違反をすることなく、同じ商取引を続けることができたのに、
契約の手間や売却先の情報開示を惜しんだために警察に逮捕されるというのも、甚だ不合理な話です。
わずかな事務作業と、警察に逮捕されるリスクでは、どちらを選ぶかという比較の対象になりません。
同じことをやっているという心当たりがある企業は、早急に是正をする必要がありますね。
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コメント
こんにちは。
この事件について詳細は分りませんけど、一昔前まで安定品目の混載廃棄物を引き取り後、下記のような行為を行っている業者の存在を結構耳にしました。
①有価物になりそうなもの(単体で値の付く金属、プラスチック、紙等)を途中(収集運搬業者の車庫、買い取り業者等)で一旦降ろして回収後、再び積みなおして契約の処理場に向かう。
②上記にて回収後の残りがかなり少なくなった場合、他の排出事業者のゴミに混ぜて、本来降ろすはずの契約処理場で処理済み印のみもらう。
多分上記のような行為が多少なりとも行われていたのではと推察します。この事件の排出事業者は大手食品会社となっていましたが、年1回程度の処理場確認ではなかなか不正を見抜けなかったものと思われます。
廃プラスチックの有償買い取りはここ数年、単価が安い為に相当量が集まらないと運搬費込みで有価にはなり難いです。ただ運搬費の補助が必要となる場合には尾上先生の仰るように運搬のみ産業廃棄物契約での運用を行うべきですが、先般の高炉スラグの事件でも同様にこの運用自体を排出事業者や処理業者が知らないか、排出事業者の方であまり運用したくない(法的にグレーゾーンではないか、他であまり見ない方法で怖い、本当に法的に問題ないのか等の疑問)為、殆ど有価物にもかかわらず敢えて廃棄物として契約している現状が多いのも、このような有価物抜き取り行為を誘発する一因かもしれません。
排出事業者としては、定期的に抜き打ちで車両の尾行等するしか発見は難しいかもしれないですね。
中間処分業者の印鑑を勝手に偽造して
書類を作成したので有印私文書偽造罪及び同行使罪で
印鑑を偽造された中間処分業者が刑事告発したから
逮捕されただけですよね。
ぼくはハト 様 コメントいただき、ありがとうございました。
積替え保管の許可業者なら、マニフェストの虚偽記載以外は合法的に行えましたが、
ご指摘のように、積替え保管許可を持たない業者が、無許可で積替え保管をしているところが多いですね。
不適正処理を一度の現地確認で見抜くというのはなかなか難しいと思いますが、
今回はマニフェストに不具合が多々ありましたので、排出事業者の無関心が受託者の違法行為を助長していた面もあったと思います。
たしかに、中間処理業者が告発をしたことが契機となった可能性もありますが、
今回は、東京都が立入検査をした際に、中間処理業者の偽造印を発見していますので、告発者は東京都ではないかと考えております。
また、マニフェストの虚偽記載についても、直罰の対象となっておりますので、その違反事実だけで逮捕の理由となります。