アイダ設計の委託基準違反事件

年商430億円のアイダ設計が元請として施工した際に発生した廃棄物を、無許可業者に委託をし、さらに他の無許可業者に再委託され不法投棄されるという事件が発生しました。

2014年10月22日付日本経済新聞 廃材無許可処理で社長ら逮捕 廃棄物処理法違反容疑

 解体工事で発生した廃材の処理を無許可で請け負ったとして、警視庁生活環境課などは21日、建築工事会社、ワークシェアリング(東京都八王子市)社長(41)と、ワーク社から委託を受けたボイスよこはま(横浜市)社長(47)ら計3人を廃棄物処理法違反(受託禁止違反)容疑で逮捕した。

 同課はワーク社に解体工事を委託した戸建て分譲大手のアイダ建設(筆者注:日本経済新聞が「アイダ設計」を誤記したものです)(さいたま市)と同社幹部ら数人も同法違反(委託基準違反)容疑で23日に書類送検する方針。元受け業者を同法違反で摘発するのは異例。

 西容疑者らの逮捕容疑は今年1月下旬、産廃処分業の許可がないのに、木くずや廃プラスチック類など計約17トンの運搬、処理を請け負った疑い。

 同課によると、ボイス社が東京都多摩市の造成地に廃材を不法投棄したという。アイダ設計は1981年設立。低価格の分譲住宅で知られ、2013年3月期の売上高は430億円。同社の担当者は取材に「警視庁の捜査に協力したい」と話している。

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セミナー等でそのまま活用できるレベルの、絵にかいたような法律違反事例となっています。

主な教訓としては下記の3点が挙げられます。

まず1点目「元請事業者の責任の認識不足」

テレビ報道では、「アイダ設計側に監督責任は?」という問いに対し、アイダ設計の社長が「法律が3年前に変わったらしいんですよ。うちが土木の方がちょっと、僕の考えでは知識不足かなって」と答えています。

正確には、監督責任という抽象的なものではなく、元請事業者には排出事業者責任というもっと具体的な責任が科されていますので、「知識不足」というコメントには違和感があります。

「法律の不知」は違法性阻却事由にはなりませんので、「知りませんでした」や「知識不足」という言い訳は恥の上塗りになってしまいます。。。


次に2点目「無許可業者への委託の危険性」

排出事業者としての責任を知らなかった元請事業者にも大きな過失がありましたが、
廃棄物の運搬を引き受けた下請の解体事業者が、元請以上に法律の規定を知らないのも当然のことかもしれません。

もちろん、先述したとおり、法律を知らないからといって犯罪を起こしても良いわけではありませんが、
法律の規定を知らない以上、無許可業者が法律違反を起こす可能性は、許可業者よりも何倍も高まります。

漫画やドラマとは違い、「法律や実務に詳しいモグリ業者」というものは、現実には存在しません。

最後に3点目「刑事事件で裁かれるのは社長ではなく担当者」

無許可業者の社長が逮捕されたのは、実質的に社長が廃棄物処理業務を受託していたためと考えられますが、
元請のアイダ設計の場合は、社長ではなく執行役員(つまり従業員)が書類送検されている点にご注目ください。

もちろん、排出事業の社長が絶対に逮捕されないというわけではなく、社長自ら廃棄物処理法違反を指示していた場合は、社長個人が逮捕されることも有り得ます。

しかし、実際には、社長が直々に廃棄物処理法違反を指示するケースは非常に少なく(「ホテル地下への石膏ボード放置事件」はその少ない事例の一つ)、実質的な担当者が書類送検されることがほとんどです。

私腹を肥やすために廃棄物処理法違反をするサラリーマンはほとんどいないと思います。

それでも、「ちょっとした知識不足や誤解によって、仕事の進め方によっては刑事事件の被告人となる可能性がある」のが事実ですので、
それを念頭に置いていただくだけで、仕事のやり方が随分変わると思います。

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