法律違反のオンパレード

廃棄物処理業に関連する複数の法律違反が一挙に噴出した事件が起こりました。

2014年11月20日付 読売新聞 産廃を一般ごみに見せかけ処理場に不法投棄

 産業廃棄物を一般のごみの処理場に不法投棄したとして、大阪府警生活環境課は19日、堺市南区城山台、産廃収集運搬業「村上産業」社長や従業員ら3人を、廃棄物処理法違反の疑いで逮捕した。

 いずれも、容疑を認めているという。

 発表では、容疑者らは今年8~9月、堺市と京都市から出た廃プラスチックや木くずなど産廃約3870キロに、ほかのごみを混ぜるなどして一般のごみに見せかけ、泉佐野市田尻町清掃施設組合第二事業所(泉佐野市)の処理場に不法投棄した疑い。

 府内外の事業所から産廃を収集し、2009年4月~今年8月に搬入手数料2655万円を支払っていた。泉佐野市から、搬入許可を得ている他社名義の許可証を使うなどして1日2回、運び込んでいたという。

産業廃棄物を一般廃棄物の清掃工場に不当に持ち込み、泉佐野市を騙して廃棄物処理をさせたことは「不法投棄」に該当しますので、事件としてはわかりやすい構造です。

ただし、実際に不法投棄をした産業廃棄物収集運搬業者の他にも、その業者に委託をした「排出事業者」と、泉佐野市の許可を名義貸しした「一般廃棄物収集運搬業者」の存在がうかがえますので、それぞれの当事者ごとに法律のどの部分に違反をしたのかを整理してみます。

不法投棄実行者

不法投棄実行者には「不法投棄」の他、
1.一般廃棄物収集運搬業の無許可営業
2.マニフェストの虚偽記載
3.マニフェストが委託者より交付されていなかった場合は、産業廃棄物の引受禁止義務違反
等が成立する可能性があります。

1.の一般廃棄物収集運搬業の無許可営業についてですが、捨てた廃棄物の中に「木くず」があったとのことですが、それが建設廃棄物や木製パレット等以外の木くずであった場合は、産業廃棄物ではなく一般廃棄物となります。具体例としては、木箱などが考えられます。

2.は、マニフェストに「泉佐野市で処分してもらった」と正直に記載をするとは思えませんが、他の産業廃棄物中間処理業者に押印をしてもらったのであれば、運搬先や運搬終了年月日の虚偽記載が成立します。

3.は、そもそも委託者からマニフェストが交付されていなかった場合に、処理業者としてはその産業廃棄物を引き受けると直罰の対象になります。
2010年改正で盛り込まれた罰則ですので、2011年4月以降のマニフェストの有無が問題となります。

産業廃棄物の排出事業者

1.委託基準違反の疑い
・委託者の許可内容を確認したか
・書面で運搬委託契約をしていたか
・契約において運搬先を指定していたか
・契約において適正な処理単価を明示していたか
・中間処理業者と契約をしていたか
2.マニフェスト
・マニフェストを交付していたか
・返送されてきたマニフェストに不審な点があった場合は、都道府県知事に措置内容報告をしていたか
・マニフェストを保存していたか

等に該当するかどうかが問題となります。

名義貸しをした泉佐野市の一般廃棄物収集運搬業者

・不法投棄実行者への名義貸し
・(不法投棄に主体的な役割を担っていた場合は)不法投棄の教唆や幇助
に該当する可能性があります。

まとめ

「不法投棄」という一つの法律違反が成立するためには、これだけ多数の当事者の協力(?)が不可欠なのです。

「不祥事に巻き込まれた」と被害者の立場を演ずるのは容易ですが、取引先の不正行為を助長する黙認や安値の強要などがあれば、委託者が訴追の対象になる可能性もありますので、他人事の事件と高をくくるのは危険かもしれません。

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