浜松市がマニフェストの不交付で書類送検される事態に

当ブログ 2014年5月19日付記事 浜松公園緑地協会が不法投棄罪で書類送検 で、浜松公園緑地協会が公園管理の際に出た廃棄物を公園内の土地に不法投棄した容疑で書類送検された事例を紹介しました。

事件そのものは2012年に発覚したものですが、新たに浜松市がマニフェストの不交付容疑で書類送検されてしまうという、極めて珍しい事態に発展してしまいました。

2014年11月26日付静岡新聞 浜松市ずさんな産廃処理 細江署、市と2職員書類送検

 排出した産業廃棄物を収集運搬業者に引き渡した際に、産業廃棄物管理票(通称・マニフェスト)を交付しなかったとして、細江署と県警生活経済課は26日、廃棄物処理法違反の疑いで浜松市と職員2人を静岡地検浜松支部に書類送致した。産業廃棄物の適正処理を周知、監督する立場にある市が、ずさんな処理を行っていたことが浮き彫りになった。

同じ浜松市ではあっても、産業廃棄物の規制監督をしている部局と、都市公園の管理をしている部局は異なりますので、構造的には他の自治体においても起こってもおかしくない法律違反ではあります。

実際には、自治体によるマニフェストの不交付は、非常に多く存在しているのが事実です。

それほど遠くない過去においては、公立病院でのずさんな廃棄物処理が問題になっていました。

 書類送致された職員は、市都市整備部公園管理事務所長(63)=磐田市=と、同事務所の公園整備グループ長(54)=浜松市=(肩書はいずれも当時)の2人。
 送致容疑は2012年3月24日から26日までの間、同市中区の四ツ池公園内で、市が排出した産業廃棄物を収集運搬業者に引き渡した際に、市を排出事業者とした産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しなかった疑い。
 細江署などは組織としての責任を問うため、従業者が業務に関して違反行為をした際に法人にも刑を科す規定を適用して、市も書類送検の対象にした。

前述したとおり、自治体を廃棄物処理法違反で書類送検の対象とするのは極めて珍しいケースです。

 捜査関係者によると、引き渡された産業廃棄物は市内の公園や街路樹の維持管理業務で出たコンクリート殻や古タイヤ、自転車など。市が委託した別の組織によって回収され、少なくとも2011年から四ツ池公園内の一角に置かれ、放置された状態だった。
 市が処理に動いたのは、12年1〜2月に近隣住民から、臭いなどの苦情が複数回にわたって寄せられたためとみられる。公園管理事務所長(当時)が指示したという。
 同署によると、公園管理事務所長(当時)は、これまでの任意の調べに対し容疑を認め「処理手続きについて詳しく知らなかったので違法な手続きをしてしまった」と話している。グループ長(同)は「廃棄物は業者が処分すると思っていた」と違法性の認識はなかったと説明しているという。

fairy公園管理者としては、
公園管理業務に伴って発生した廃棄物の処理ルールを当然知っておかねばならなかったはずですが、所長と現場責任者の双方が無知だったようです。

しかしながら

こうした「自分は何もしなくても、夜の間に妖精さんがゴミを片付けてくれる」に等しい、ファンシィな感覚しか有していない排出事業者も意外と多いのが現実です。

◇管理票交付 収集業者“肩代わり”
 マニフェストは、産業廃棄物が適切に処理されているか排出事業者が把握するための書類。排出事業者は種類や数量を記入し、廃棄物と共に収集運搬業者に交付することが義務付けられている。
 捜査関係者によると、収集運搬業者は産業廃棄物の引き渡しを受けた前後、浜松市から委託を受けて廃棄物が置かれていた四ツ池公園の一角の地面をコンクリートにするため工事を実施。市から引き渡しを受けた廃棄物をこの工事の過程で排出したものとして、自らを排出事業者とした電子マニフェストを交付し、工事で出た廃棄物と共に処理していたという。

◇今後は法令を順守
 鈴木康友浜松市長の話 市民に多大なるご迷惑をおかけしたことをおわびする。今後、法令を順守し、二度とこのようなことがないようにします。

本来の排出事業者ではないのに、マニフェストを交付した収集運搬業者には罰則が適用されるかどうか?

廃棄物処理法第12条の3では、
その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、環境省令で定めるところにより、
・当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に
・当該産業廃棄物の運搬を受託した者(当該委託が産業廃棄物の処分のみに係るものである場合にあつては、その処分を受託した者)に対し
・当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票を交付しなければならない。
と定められています。

今回の収集運搬業者は、産業廃棄物を発生させた事業者ではないため、マニフェストの交付義務が無かったということになります。

そのため、本来のマニフェスト交付義務者であった浜松市が、マニフェスト交付義務違反をしていたことになり、書類送検されることになりました。

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コメント

  1. オレンジ より:

    初歩的な質問で誠に恐縮ですが、廃掃法では主語が「事業者」「市町村」「都道府県」「国」等に別れています。となると、第12条の3「その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者」とは「事業者」を指し、「市町村」「都道府県」「国」などの行政機関は管理票の交付義務はないのではないでしょうか?勉強不足で誠に申し訳ありません。

  2. 尾上雅典 より:

    コメントいただき、ありがとうございました。

    国や地方自治体の義務が除外される規定としては、「業許可」や「施設の設置許可」等がありますが、その場合は、条文上で地方自治体等を除外する明文の規定が置かれています。

    逆に、それらの除外規定が無い条文においては、地方自治体等も事業者の範疇にすべて含まれることになります。

    そのため、明文の除外規定が無い以上、地方自治体にもマニフェストの交付義務がかかるということになります。


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