産業廃棄物処理業者が日々の操業時にもっとも注意すべき法律リスクとは

産業廃棄物処理企業が重視すべき法律リスクとしては、「欠格要件」や「廃棄物処理法違反」を最上位に挙げなければなりませんが、
その他で、平常時の操業で廃棄物処理法違反と同等の警戒度で対処しなければならないリスクとしては、「業務上過失致死傷罪(刑法第211条)」があります。

(業務上過失致死傷等)
刑法第211条  業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

企業の役員等が業務上過失致死傷罪で禁錮刑以上に処せられた場合、その役員は欠格者となるため、産業廃棄物処理業許可が必ず取消されることになります。

実際は、「工場長」や「現場責任者」といった安全管理責任を法人から委任された従業員が、現場で安全管理責任を負っている場合が多いため、役員よりも、従業員個人が書類送検される方が多くなっています。

2015年3月10日付 時事ドットコム
産廃処理工場長ら書類送検=有毒ガス発生で7人負傷-広島県警

 産業廃棄物処理業「喜楽鉱業」(滋賀県)の広島県北広島町にある広島総合工場で昨年7月、硫化水素ガスが発生し作業員7人が負傷した事故で、広島県警捜査1課などは10日、業務上過失傷害の疑いで、工場長の男性(34)ら6人を書類送検した。いずれも容疑を認めているという。
 送検容疑は昨年7月24日午後3時ごろ、工場で廃棄物処理中に、本社から誤って配送された強酸性物質と強アルカリ性物質を容器に同時に投入し、硫化水素ガスを発生させて作業員7人に硫化水素中毒の軽傷を負わせた疑い。

今回ご紹介したニュースでも、現場の安全管理責任者が書類送検されています。

※参考記事 当ブログ2015年1月5日付記事
エバークリーンの爆発事故は業務上過失致死傷罪で決着

ただし、万が一、取締役が工場長を兼務しており、その取締役(工場長)が同法違反で有罪となった場合は、先述したとおり、その会社の業許可は必ず取消されることになります。

もちろん、「従業員が書類送検されるだけなので、会社の業許可には影響が無い」と楽観視している処理企業は無いと思いますが、

一度労災事故が発生すると、警察・消防・労働基準監督署に対して、安全管理に問題が無かったことを繰り返し繰り返し説明しなければならなくなる他、従業員の被害補償や治療費の発生、そしてメディアで報道されることによる信頼性の毀損、といった様々な危機が一気に発生することになります。

他の産業よりも重大な労災事故が起こりやすい環境にあるからこそ、労災事故が発生しないように常に警戒をしておく必要があります。

「そんなことをお前から言われるまでもないよ」と言われそうですが、
安全対策に熱心で信頼性の高い処理企業の方にはこの真理に共感していただける、と確信しています。

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コメント

  1. エフ より:

    喜楽鉱業は許可証取り上げにならないのでしょうか?
    また、同様の事故を起こしている産廃業者も取り上げにならないのは何故ですか?

  2. 尾上雅典 より:

    エフ 様 コメントいただき、ありがとうございました。

    労災事故そのものが廃棄物処理法の規制とは無関係に起こった場合、廃棄物処理法違反にはなりませんので、許可取消とはなりません。

    そのため、同様の事故の多くでは、許可取消が起こっていないものと思われます。

    もっとも、許可取消にならないとしても、労基署や警察から厳しい調査を受けることに違いはありませんが。


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