「量」のみならず「目的」も問題

廃棄物の野外焼却に関する簡潔な報道ではありますが、流し読みをすると気づかない問題点がありましたので、ご紹介いたします。

2015年5月14日付 産経ニュース 「暖を取る程度なら…」都の言葉を逆手に木くずを野焼き 容疑で建設業の社長ら逮捕 警視庁
※容疑者の氏名等は省略して転載。

 コンクリート製造に使った木製合板を会社の敷地で野焼きしたとして、警視庁生活環境課は廃棄物処理法違反(焼却禁止)容疑で、建築業「大樋建設」(東京都東大和市)社長(47)と従業員ら3人を逮捕した。同課によると全員容疑を認めている。

 木製合板は産業廃棄物となり、ダイオキシンが出ないよう中間処理施設で有料で処分しなければならない。平成20年に住民からあきる野市に苦情があり、市と都が計17回行政指導。7年間の焼却量は488トンにのぼるとみられる。

 逮捕容疑は1~3月、同社の資材置き場で、産業廃棄物の木くず計約540キロを燃やしたとしている。容疑者は「『暖を取る程度なら燃やしていい』と都に言われたのを逆手に取って、燃やすよう指示していた」と話しているという。

この報道の表現ですと、東京都が容疑者の犯罪を助長、あるいは教唆したかのような印象を受けてしまいます。

ほぼ確実に、行政が野外焼却を認める趣旨の指導をすることは有り得ませんので、東京都がこのように不用心な指導をしたとは思えませんが、

行為の是正を働きかける際の言葉づかいとして、示唆に富むものとなっています。

違法となる行為を適法な行為に変えていくために、明文化された法律の例外規定を満たすように努めることはよくありますが、

その際に注意しなければならないこととして、「例外規定が適用される条件を拡大解釈しない、あるいはさせない」という1点があります。

今回の事件は、容疑者が自分にとって有利となるように、野外焼却の罰則の除外規定を拡大解釈した結果、長期間にわたり野外焼却を反復継続していたものと思われます。

当ブログ 2013年12月13日付記事 「野外焼却禁止の除外規定」でも野外焼却事件を取り上げたところですが、改めて野外焼却の罰則の除外規定を引用します。

(焼却禁止)

廃棄物処理法第十六条の二  何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。

一 一般廃棄物処理基準、特別管理一般廃棄物処理基準、産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物処理基準に従つて行う廃棄物の焼却
二 他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却
三 公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの

(焼却禁止の例外となる廃棄物の焼却)

廃棄物処理法施行令第十四条 法第十六条の二第三号の政令で定める廃棄物の焼却は、次のとおりとする。

一 国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却
二 震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却
三 風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却
四 農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却
五 たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの

2015年1~3月の3カ月間で540kgのコンクリート型枠を焼却というのは、たき火の範疇を明らかに超える、ただの廃棄物の野焼きと言わざるを得ません。

2000年の法律改正により野外焼却は直罰の対象となっていますので、いたずらに行政指導を繰り返し、7年間も野外焼却を続けさせてしまったことは、行政の失敗と言えます。

環境省が2013年3月25日付で発出した「行政処分の指針」でも

行政指導を継続し、法的効果を有する行政処分を行わない結果、違反行為が継続し、生活環境の保全上の支障の拡大を招くといった事態は回避されなければならないところであり、緊急の場合及び必要な場合には 躊躇することなく行政処分を行うなど、違反行為に対しては厳正に対処すること。
この場合において、当該違反行為が犯罪行為に該当する場合には捜査機関とも十分連携を図ること。

と、効果のない行政指導を繰り返すことは否定されています。

行政官のみならず、我々事業者にとっても、「行政処分の指針」は知っておくべき知識体系の一つになりますので、
いずれ(可能であれば年内に)全内容を解説した書籍を上梓したいと考えております。

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