撤去させる方が先なのでは?

最近の地方自治体においては、一時期「監視カメラ」がもてはやされたのと同様に、ドローンへ寄せる期待が高まっています。

愛知県におけるドローンの試験運用について、先日の記事でご紹介したところですが、
本日は、愛知県よりも一足早くドローンを導入した茨城県での運用実績をご紹介します。

2015年7月4日付 茨城新聞 ドローン導入1カ月 不法投棄抑止に効果 活用状況、県が公表

県は3日、不法投棄の監視指導を目的に5月下旬から本格導入した小型無人機「ドローン」の活用状況を公表した。県南・県西地区の計6カ所で産業廃棄物の保管場所などを上空から撮影し、敷地内に新たに廃棄物が持ち込まれたことを確認して、現場の実態把握に役立てた。県は不適正な行為の抑止に一定の効果が得られたとしている。

ドローンは5月29日から県が本格導入し、6月末までに県南地区2カ所と県西地区4カ所で使用した。監視対象は、産業廃棄物の過剰保管が5カ所、無許可の残土埋め立てが1カ所だった。

県不法投棄対策室によると、ドローン使用により、以前から積み上げられていた廃棄物が敷地内で移動していたことや、新たに廃棄物が運び込まれていたことを1カ所で確認した。

残る5カ所では敷地の全体像を把握するために使い、これまでよりも廃棄物の搬入や土地の形状の変化を確認しやすくなったという。

県は今後も、廃棄物の増減などの変化を継続して調べる方針。撮影した画像を事業者に見せて現状を認識させ、廃棄物を撤去するよう求めるなど効果的な指導につなげていく。

不法投棄対策室は「事業者が上空からいつでも監視され、画像を保存されると認識することで、不適正な行為への抑止効果が高まっている。今後も積極的に使っていきたい」としている。

ドローンを使用することで、「現場の実態把握」に役立つことは間違いありません。

しかし、「不適正な行為の防止に一定の効果が得られ」るかどうかは甚だ疑問です(苦笑)。

理屈を言えば、「ドローンを活用したことで不適正処理防止に効果があった」と主張をするならば、最低限、ドローン使用前とドローン使用後の変化がわかる、不法投棄の「量」、あるいは「件数」等の具体的な数値を挙げねばなりません。

たった1月の運用ではそのような結果を出すことは不可能ですので、茨城県の公表内容が新聞報道通りであるならば、いささか説得力に乏しい希望的観測と言わざるを得ません。

また、ドローンは無人偵察機ではありませんので(笑)、現場から遠く離れた場所からリモートで監視をすることもできません。

今のところ、ドローンを使用する際には、必ず現場に出向き、なおかつ視界を遮るものがないかを確認しながら、短時間で撮影を終える必要があります。

そうしないことには、バッテリー切れによる墜落や、電波の到達範囲外に出ることによるロスト、木の枝との接触による故障などの様々な危険性があるからです。

愛知県の実験」で使用されたドローンの機体は、「最長15分の飛行が可能」とのことです。

2015年7月3日付 電氣新聞 ドローンで産廃施設を監視-中部保安協

中部電気保安協会(石田篤志理事長)は小型無人飛行機「ドローン」を積極的に活用している。このほど、愛知県瀬戸市の産業廃棄物保管場で、産業廃棄物の保管状況を上空から監視する様子を報道陣に公開した。愛知県から委託を受けたもので、中部地方では初めての取り組み。同協会は、メガソーラー(大規模太陽光発電所)設備の点検に使用している機体を活用した。

機体は全長96センチメートル、重量約4キログラムで、1バッテリー当たり最長15分の飛行が可能。赤外線で温度感知し熱画像にするサーモカメラと、上空からの映像が鮮明に写る可視カメラを搭載している。今年の4月に導入され、メガソーラー設備の点検に使用している。

15分間というのはそれほど長い時間ではありませんので、広い現場の場合は悠長に飛行をさせることはできず、大急ぎで飛行と撮影をやり遂げる必要があります。

さて、ここまでの論調を見ると、「こいつはドローン否定派なのか!?」と思った方が多いかもしれませんが、筆者としては、ドローンを敵視する気はまったくありません。

筆者が危険と思うのは、監視カメラやドローンといった高価な玩具を導入しただけで満足してしまい、行政官が生身で行動し、自分の頭で考える機会を放棄することです。

今回の茨城県の発表にしても、ドローン活用方法の実験である以上、事業の目的にまで踏み込んだ議論をするのは野暮なのかもしれませんが、
問題の存在を認識している現場があるならば、悠長にドローンを飛ばして撮影をするよりも、廃棄物の撤去をさせる方が先なのでは?
という、大きな違和感が残る記者発表でした。

なお、この記事の執筆時点では、茨城県のHPで7月3日の記者発表の内容が公表されていませんので、茨城新聞の記事のみを前提とした考察となっています。

さて、ドローンを使ってプロが空撮をすると、このような迫力のある映像が撮影できるようです。
※再生すると音が出ますので、音量設定などを事前に調整してください。

上記の空撮映像を撮影したプロの解説では、

DJI Inspire 1 フルセット マルチコプター (送信機1台付属) 4Kカメラ搭載 IS1JP
が、お奨めのドローンのようですが、価格が383,400円です・・・

少なくとも、筆者にとっては手を出せない価格帯です(笑)。

また、重さ9kgの物体が空から降ってくるリスクを考えると、損害賠償保険に加入するのも必須と言えます。

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コメント

  1. agatanusi より:

    不法行為を未然に抑止するのは、大変結構なことであると思いますが、国内においてドローンによる撮影、あるいは監視行為が如何なる法的根拠に依って許されるのかが不明瞭な現状で、自治体がこのような監視活動を行うことが、果たして合法的な行為であるのか否かの議論も必要であると思います。

  2. 尾上雅典 より:

    agatanusi 様 コメントいただき、ありがとうございました。

    ご指摘のとおり、ドローンにせよ、監視カメラにせよ、法を遵守すべき行政が、その効果(怪しいものを含む)のみに目を奪われ、個人情報の保護方法や法的根拠に目を向けることなく飛びついてしまう傾向にあります。

    残念なことに、行政内部で、そうした議論を慎重に行っているところは非常に少なく、問題が公になった時点で慌てて対処をするというところがほとんどと思われます。

    今はまだ問題自体が顕在化していないだけで、ドローンのように取扱いが難しい機器の使用頻度が増えると、問題が顕在化するのも時間の問題と思います。


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