大同特殊鋼のスラグ問題が刑事事件に

東証一部上場企業の大同特殊鋼が有害物質の含まれたスラグを建築資材として販売していたことが発覚したのが、2014年の1月末でした。

そこから1年半を経てようやく告発の動きとなっていますので、少々遅きに失した感がありますが、正式に刑事事件として捜査の対象となる模様です。

2015年7月27日付 毎日新聞 大同特殊鋼:有害スラグ、強制捜査へ 不正処理委託の疑い

 大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の群馬県渋川市の工場から出た鉄鋼スラグに環境基準を超える有害物質が含まれていた問題で、群馬県警が近く廃棄物処理法違反容疑で強制捜査に乗り出す方針を固めたことが捜査関係者への取材で分かった。同社を巡っては、高額な処分費を避けるため、事実上の引き取り料を支払ってスラグを建築資材として販売する「逆有償取引」も判明しており、県警は実態解明を進めるとみられる。

 群馬県などによると、大同は2009〜12年ごろ、渋川市の建設会社にスラグを販売する際、受取額以上の金額を「販売管理費」名目で支払っていた。環境基準を超えるフッ素を含んだ状態で出荷しており、さらに逆有償取引をしていることから、事実上の廃棄物処理に当たり、同法の規制対象となる。

 スラグは鉄精製時に出る副産物で、さまざまな化学物質が残存することがある。大同は、建設会社が処理資格を持っていないと知りながら処理委託していた疑いがあり、県が近く同法違反容疑で刑事告訴、県警が家宅捜索に着手する見通し。

 逆有償取引は、買い取る側が購入分だけ逆に収入が増えるため適正使途がないのに取引を続ける可能性があり、産廃が野積みされる温床と指摘される。スラグを産廃として処分すると費用がかさむため、県警は大同側が有害性を認識しながら取引を続けた可能性が高いとみて調べる。

 この問題を巡っては同県の八ッ場ダム建設地から立ち退いた住民の移転代替地や、国道17号バイパスに大同の有害スラグが混じった建設資材が使われていたことが、毎日新聞の調べで判明。毒性の強い六価クロムも検出されている。

※当ブログ関連記事 
2014年1月28日付記事 「売ったはずのスラグからフッ素等が流出

悪知恵の働く実行者なら、1年半の猶予の間に証拠隠滅や関係者の口裏合わせを行い、自己に不利な証拠が露見しないように対策をしますが、
今回の事件では、当初から逆有償取引の証拠である「スラグの売価よりも高額な販売管理費の支払い」の存在が認められていたことから、群馬県には大同特殊鋼側の委託基準違反をうかがわせる証拠を握られていたようです。

証拠を握っていた以上、もっと早期に事件化できたものと思われますが、関係者の言い分の裏付けを慎重に取ることを優先させたのかもしれません。

警察の捜査が入る以上、無許可業者への委託という委託基準違反事件として立件される可能性が非常に高くなります。

その場合、法人としての大同特殊鋼が立件されるのは当然として、社内でスラグの違法処理を主導した人が取締役だったのか、一社員だったのかはわかりませんが、その人も立件されることになりそうです。

また、もし裁判で廃棄物処理法違反が確定した場合、大同特殊鋼の取締役に対し、「違法行為で会社に損害を与えた」という理由で株主から株主代表訴訟が起こされる可能性も出てきます。
cf.石原産業フェロシルト事件

リサイクル偽装取引は粉飾決算

日本の火力発電所や製鋼所から発生する石炭かすは、お金を払って韓国のセメントメーカー向けに輸出されていますが、これなども「逆有償取引」となります。

しかし、石炭かすの輸出の場合は、廃棄物処理法に基づき環境大臣の確認を得て行われていますので合法です。

そのため、逆有償取引のすべてが違法ではありませんが、
リサイクル偽装に代表される廃棄物処理費の違法なカットは、決算書の見栄えを良くするための粉飾行為と言っても過言ではありません。

最近、東証一部上場企業でも粉飾決算が流行っているようですが(苦笑)、
廃棄物処理費に関する粉飾決算の場合は、会計監査で見抜くのは非常に困難です。

リサイクル偽装自体は、経費の支払いや、売上の計上という、基本的な会計ルールには合致しているからです。

リサイクル偽装は、現場の意向次第ですぐにできる粉飾と言えなくもありませんが、
それが露見した場合には、担当者の逮捕・有罪が起こり得ますので、担当者にとっては、企業決算の粉飾以上に危険なリスクです。

「自分の身を犠牲にしてでも、会社の見かけ上の決算状態を良くしたい」という、最大限の(そして間違った)愛社精神にあふれた人にしかお奨めできない手法です。

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