未来予想で事業の全部停止30日間の処分

未来予想が犯罪になるわけではもちろんありませんが、
マニフェストに未来の予定を記載して返送すると犯罪となり、行政処分の対象となります。

2016年8月23日付 三重県発表 「産業廃棄物処理業者の行政処分(事業の停止及び処理施設の使用の停止)を行いました

3 行政処分の理由
 平成28年5月30日に津市森町字上大谷地内にある有限会社Dへ三重県が実施した立入検査において、排出事業者から汚泥の処分を受託した際に交付を受けた産業廃棄物管理票について、処分終了年月日欄に未来の日付が記載された産業廃棄物管理票を現認しました。そのため、有限会社Dに汚泥の処分を委託した排出事業者及び産業廃棄物収集運搬業者に三重県が立入検査を実施し、事実関係を確認したところ、有限会社Dが産業廃棄物管理票の処分終了年月日に未来の日付を記載して、その写しを送付していたことを確認しました。
 産業廃棄物の処分が終了にしていないにもかかわらず、処分が終了する日を予め記載して産業廃棄物管理票の写しを送付することは、法第12条の4第3項の違反(虚偽の管理票の交付等の禁止)に該当します。
 このため、平成28年8月22日、有限会社Dに対して、法第14条の3の規定に基づき、産業廃棄物収集運搬業及び処分業の事業の停止を、法第15条の2の7の規定に基づき、産業廃棄物処理施設の使用の停止を命じました。

「未来の日付」という表現が面白いと思いました(笑)。

未来と言えば未来ですが、行政文書では、「将来の日付」と書く方が一般的ではないかと思います。

そこをあえて「未来」としたところに、三重県の未来志向がうかがえます。

さて、「これのどこが犯罪なんだ。どの業者でもやってることだ」と感じた方が多いかと思います。

今回の処分対象となった処理業者も、行政が見ている前で、堂々と(?)「未来の日付」をマニフェストに記入していたようですので、違法とは微塵も思っていなかったようです。

廃棄物処理法第12条の4第3項では、

運搬受託者又は処分受託者は、受託した産業廃棄物の運搬又は処分を終了していないにもかかわらず、前条第三項若しくは第四項の送付又は次条第二項の報告をしてはならない。

とされていますので、マニフェストに虚偽記載をしたとしても、それを委託者や収集運搬業者に送付していなければ、厳密には法律違反にはなりませんでした。

ただし、通常、そのようなマニフェストの運用を行う場合は、マニフェストの返送コスト削減のため、産業廃棄物の受入れ段階で収集運搬業者に処分終了のマニフェスト写しを渡すのが一般的ですので、現実的には虚偽記載をすると、虚偽報告まで必然的に発展します。

処理業者が委託者にマニフェスト写しを返送しないことも犯罪になりますので、虚偽記載をしたマニフェスト写しはいずれ返送せざるを得ないからです。

マニフェスト写しを送る寸前に、「これではいけない!正しい処分終了年月日を記載しよう」と思い直さない限りは。

マニフェストの運用と会計処理はよく似ているところがあるのですが、
処理終了年月日の虚偽記載は、「売掛金を売掛金として計上せずに、最初から売上高と計上する」ようなものです。

「いずれ処理するのは間違いないから、受入れをした時点で処理終了年月日まで書いておく」ことが虚偽以外の何者でもないことはおわかりいただけたと思います。

「未来の日付」と「実際の処理終了年月日」は、それくらい似て非なるものなのです。

もちろん、各委託者ごとに処理終了年月日の日付を確定させることが困難な場合も多々あります。

しかし、そうだからといって、実際の処理をしていないにもかかわらず、嘘の記載をあらかじめして良いということにはなりません。

同様の行為を悪意なくやってしまっている処理業者の方は、今すぐそのやり方を辞め、廃棄物処理法に則った正しい運用に改めてください。

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