理想と現実

理想的な状態を誰しも実現させたいと思うものですが、それを実現させられないことが判明した時に、現実にどう対応するかという点に人や組織の真価が現れます。

昨今の日本においては、現実とかい離した、口当たりの良いリップサービスばかりがはびこり、政府や地方自治体による「あとは野となれ山となれ」式の無責任なばらまきがよく見受けられます。

そのような状況の中、不法投棄物の全量撤去計画を修正する静岡県袋井市の姿勢はむしろ誠実と評価できる面もあります。

2017年3月6日付 静岡新聞 「住民指摘「見通し甘い」 袋井市が廃棄物の現地保管説明

 袋井市は5日、行政代執行で廃棄物を撤去している同市国本地区で住民説明会を開いた。市は廃棄物量が当初の想定を大幅に上回ったため、全量撤去の方針を改めて未処理量を現地で保管することを報告。全量撤去を求めていた住民からは見通しの甘さなどを指摘する意見が上がった。
 市は2016年度補正予算で代執行費約6300万円を計上し、16年11月から撤去に着手した。ただ、廃棄物量は当初の見積もりを大きく上回り、ブラウン管ガラスは倍以上の1354トン、廃冷蔵庫類は46・2トンと判明。市は予算で対応できないガラス859トンについて防水シートやコンクリートパネルの敷設などを図り、現地で保管するとした。

予算が無尽蔵に確保できるのであれば、全量撤去をするのが当然となりますが、行政代執行の財源は市税である以上、補正予算の範囲内で対応するというのが妥当ということになります。

その一方で、住民側の

 市担当者は廃棄物量が想定を上回った理由を「ガラスの上に冷蔵庫の扉が幾重にも積まれ、正確な量が計測できなかった」などと説明。住民は「急に積み上がったのではない。現場で写真を撮って報告書も書いてきているのでは」と疑問を投げ掛けた。

という疑問も無理からぬものとは思いますが、

家電の不法投棄の場合、「産業廃棄物か一般廃棄物か」という管轄の問題が必ず発生しますので、行政対応に遅れが生じてしまうことがよくあります。

また、廃棄物の堆積は短期間で終わることもよくありますので、実質的な堆積量を正確に計測するのが困難なことがほとんどです。

具体的には、今回の件のように、「冷蔵庫の扉」を隙間を空けることなくビッシリと積み上げられてしまうと、実質的な重量が、見かけの堆積量よりも大幅に増えることになります。

現地に残される予定のガラスくずは、基本的には安定型品目になりますが、ブラウン管ガラスの場合は、鉛を高濃度で含んでいることから管理型最終処分場でしか埋められない代物です。

そのことから、現地には防水シートをかぶせる方針のようですが、日光その他で防水シートは必ず劣化・破損します。

そのため、現地に廃棄物を残す場合でも、防水シートの更新等で、袋井市はある程度の費用負担をし続けなければならない状況となります。

残念ながら、まさに、「退くも地獄、進むも地獄」という八方ふさがりの状態です・・・

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