日米地位協定見直しのチャンス?

2018年1月9日付 琉球新報 「「ごみ排出抑制を」 沖縄県、米軍に協力要請へ

 沖縄県は今月中にも在沖米軍に対し廃棄物の排出抑制やリサイクルに協力するよう正式に要請する。最終処分場が逼迫(ひっぱく)する中、昨年11月には大手産業廃棄物処理業者倉敷環境(沖縄市池原)が営業停止になり、県内の廃棄物処理の現状はより一層深刻化、適正化が急務となっている。米軍排出ごみは県民1人当たりの排出量の約2倍に上ることから、県は米軍にも“県民と同等の意識”を持って取り組んでもらうよう働き掛ける。

 県の担当者によると、米軍への要請項目は(1)廃棄物の排出抑制(2)分別の徹底(3)リサイクルの促進―の三つが柱となる。昨年末、県環境部から翁長雄志知事に対し現状報告と今後の対策について説明し、県として「なるべく早急に要請をまとめ、米軍に協力を求める」ことを確認したという。

 県が事業者などへの聞き取りを基にまとめた資料によると、2015年度に県内の米軍基地から排出された一般廃棄物は2万6332トンで、10年度以降初めて2万6千トン台を突破し、過去5年で最多となった。また県内では市町村ごとにごみの分別方法が定められているが、基地内は日米地位協定の排他的管理権により、日本の法律が適用されない。長年、米軍ごみを受け入れてきた倉敷環境の関係者は本紙取材に「基地からのごみはほぼ分別されておらず、施設内で仕分けている」と答えていた。

廃棄物は、米軍沖縄基地だけの問題ではなく、他の日本国内にあるすべての米軍基地にも共通する問題です。

恥ずかしながら、日米地位協定の概要すら理解していなかったので、外務省のHPを見てみました。

すると、簡潔なQ&Aが掲載されていましたので、廃棄物問題に関係しそうなものを2つピックアップします。

問5:在日米軍の基地はアメリカの領土で治外法権なのですか。

(答)
米軍の施設・区域は、日本の領域であり、日本政府が米国に対しその使用を許しているものですので、アメリカの領域ではありません。したがって、米軍の施設・区域内でも日本の法令は適用されています。その結果、例えば米軍施設・区域内で日本の業者が建設工事等を行う場合には、国内法に基づいた届出、許可等が必要となります。なお、米軍自体には、特別の取決めがない限り日本の法令は適用されないことは、先に説明したとおりです(問4参照)。

なるほど。米軍基地も日本の領域にはなるのですね。
恥ずかしながら、問のように、「これでは治外法権ではないか」と思ってしまっておりました。

ただ、「米軍自体には日本の法令は適用されない」という部分が根本的に重要な点となりそうですので、問4を見てみましょう。

問4:米軍には日本の法律が適用されないのですか。

(答)
一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されず、このことは、日本に駐留する米軍についても同様です。このため、米軍の行為や、米軍という組織を構成する個々の米軍人や軍属の公務執行中の行為には日本の法律は原則として適用されませんが、これは日米地位協定がそのように規定しているからではなく、国際法の原則によるものです。一方で、同じく一般国際法上、米軍や米軍人などが我が国で活動するに当たって、日本の法令を尊重しなければならない義務を負っており、日米地位協定にも、これを踏まえた規定がおかれています(第16条)。
 しかし、公務執行中でない米軍人や軍属、また、米軍人や軍属の家族は、特定の分野の国内法の適用を除外するとの日米地位協定上の規定がある場合を除き、日本の法令が適用されます。

簡潔ですが、重要な説明が書かれています。

米軍自体には日本法が適用されないが、米軍及び米軍人は、日本法を尊重する義務を負っているとのことです。

また、軍人の家族には、基本的に日本法が適用されるとのことです。

だとすると、米軍基地から排出される廃棄物であっても、米軍そのもの以外の、軍人の家族が出した廃棄物については、日本法である廃棄物処理法が適用されることになります。

もっとも、そのような区別や分別を現状では行っていないのでしょうけども(苦笑)。

廃棄物処理に限って言えば、廃棄物を処理する側の数が少ない場合、買い手(排出者)側よりも、売り手(廃棄物処理業者)側の論理に従わざるを得ない、というのが通常の状況です。

琉球新報の記事にもあるとおり、沖縄の場合は、買い手の論理で不自然に取引を続けた結果、売り手の産業廃棄物処理業者が地元住民その他に、巨大な廃棄物の山というツケを負わせる不当な状況が生まれてしまいました。

「ゴミ等は国家の安全保障と比べれば些末な問題だ」と、外務省や外交・安全保障の専門家は一蹴しそうですが、
ゴミをまったく出さないことが不可能である以上、米軍といえど、売り手の論理に従うという自然の摂理を曲げることは本来不可能です。

ゴミがたまり続けると、通常の基地管理業務すらままならなくなること必定ですので、日本側の希望というか主張は堂々とぶつけるべきではないでしょうか?

簡単な主張です。

「ゴミは『燃えるゴミ』と『燃えないゴミ』に分別してくれ」というだけです。

あるいは、米軍自体には廃棄物処理法が適用されないということなので、自前の廃棄物処理施設を設置させるのも一策かもしれません。

しかしながら、そうなると、メチャクチャな(環境に悪い)運用をされそうなので、分別の要求の方が安全そうです・・・。

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コメント

  1. 切離切離米 より:

    「あるいは、米軍自体には廃棄物処理法が適用されないということなので、自前の廃棄物処理施設を設置させるのも一策かもしれません。
    しかしながら、そうなると、メチャクチャな(環境に悪い)運用をされそうなので、分別の要求の方が安全そうです・・・。」

    日米地位協定第16条(日本法令尊重義務)というものがありますが・・・。

  2. 尾上雅典 より:

    そのとおりですね。


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