米国テレビドラマの観すぎ

2018年2月12日付 西日本新聞 「ドローンで産廃監視 火災防げ赤外線カメラ搭載 画像ソフト活用 県が量、温度計測

 福岡県は2018年度、基準を超えた産業廃棄物を保管している施設や山中に不法投棄された産廃をいち早く発見するため、小型無人機「ドローン」を活用する方針を固めた。赤外線カメラを搭載しており画像解析ソフトを駆使して、産廃の量や温度を正確に把握。火災などの事故を未然に防ぎ、測定にかかる人的負担を大幅に減らすことができるとしている。

 ドローンを使った産廃監視は青森県や三重県が実施しているが、赤外線カメラや画像解析ソフトを組み合わせたドローンの導入は九州では初めて。福岡県は、関連事業費1千万円を18年度当初予算案に盛り込む。

ドローンの用途として、火災の未然防止という新しい切り口が加わったようです。

たまたま見に行った現場で、たまたま発火の兆しがあれば、大規模火災の未然防止につながる可能性はあります。

しかしながら、
そもそも、廃棄物の大量保管という火災の発生要因を生じさせないことが第一であり、
大量に保管させてしまった後で、高性能、かつ高額ドローンを活用することが“未然”防止と言えるのでしょうか?

 これまで産廃量を把握するには、数人から十数人の職員がメジャーなどで計測していたが、丸1日かかることもあった。ドローンを使えば少人数の職員で時間も短縮できるなど、作業を大幅に効率化できる。ドローンによる定期的なパトロールを実施し、不法投棄の抑止や早期発見が可能になるとしている。

この手の報道が現れた際にはいつも言っていることですが、
「ドローンによる定期的なパトロール」で、「不法投棄の抑止や早期発見が可能」になるとはとても思えません。


こうした表現を臆面もなく使用できる人の頭には、アメリカのテレビドラマや映画で登場することの多い、「無人爆撃機」が念頭にある気がしてなりません。

映画やドラマでは、アメリカにいながら、アフガニスタンの砂漠にいるテロリストをボタン一つでミサイル攻撃する、という夢(悪夢?)のような描写がありますので、「ドローンも24時間飛ばし続けることが可能であり、いつでもリアルタイムで不法投棄実行者を特定できる」と、善良な人が信じてしまうのも仕方がないことかもしれません。

しかし、論理的には、ドローンの活用で不法投棄を未然防止するのはほぼ不可能と言えます。

なぜなら、ドローンは無作為に飛ばすべきものではなく、しかるべき現場で、しかるべきタイミングを狙って活用しないと効果が無いからです。

しかるべき現場とは言うまでもなく、「大量の廃棄物が放置されている場所」です。

では、「早期発見」ならどうかとなりますが、
それをするためには、廃棄物が大量にありそうな場所に目星をつけ、ドローンを飛ばす必要があります。

運良く、たまたまドローンを飛ばした場所で、廃棄物の存在が見つかるような幸運が無い限り、ドローンを飛ばして遊んだだけとなります。

もっとも、
人が足を踏み入れにくい高所や斜面の場合は、ドローンの効果を最大限発揮できる場所となりますので、これからは、「未然防止」や「抑止」等というオカルト的な表現は止め、「監視活動の精緻化」や「効率の大幅アップ」といった、現実的な効果に関する文章表現をしていただきたいものです。

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