処理責任まで放棄できないんだからね!

セミナー等でマスメディアや行政が作成した文書のおかしな点を解説すると

「行政やマスコミ批判を聞きに来たんじゃない」と怒る方が、全参加者のうち約1割程度いらっしゃることを、最近学びました。

「いや、批判じゃなくて、基本に照らしてこの部分の表現がおかしい、あるいは誤解を生みやすいと言っているだけなんですよ」と、一人ずつにお答えしたいところではあるのですが、それは無理ですので、ここで記しておきます(笑)。

私自身の思いとしては、上から目線の驕った批判ではなく、「間違いが起こる構造を分析し、その轍を踏まないための考察をしている」つもりです。

という弁明を注記したうえで、今回は天下の朝日新聞を“批判”する記事を書きますので、またアンチの方が増えそうです(涙)。

2018年5月29日付 朝日新聞 土地を放棄できる制度、政府が検討 要件・引受先議論へ

 政府は、土地の所有権を放棄したい時に放棄できる制度の検討を始めた。人口減で土地の活用や売却に困る所有者が増えていることが背景にある。防災上の必要性など一定の要件を満たせば、所有者が土地を手放せるようにする方向だ。放棄された土地の引受先などが課題になりそうだ。

 政府が来月に取りまとめる「骨太の方針」に盛り込む。法務省や国土交通省が具体的な検討を進め、来年2月にも方向性を示す。

 民法には「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」(第239条)との規定があるが、土地放棄の手続きを定めたルールはない。そこで廃棄物処理のように、土地の所有者が一定額を納めれば放棄できる仕組みなどを検討する。

記事の趣旨は、「不動産の所有権を放棄する制度の検討が始まった」ですので、上記の赤字の部分は、あくまでも所有権放棄の類似例として、「廃棄物処理」を挙げているだけということはわかります。

記者というか、一般的な感覚からすると、「廃棄物処理って、ようするに所有権を放棄する手続きだよね」という印象しかないのかもしれません。

しかしながら、当ブログ読者の方であれば全員がご存知のとおり、「廃棄物処理」は「所有権放棄手続き」とイコールではありません。

正確には、「所有権を放棄した物」を「廃棄物として処理委託する」のであって、所有権放棄は「目的」ではなく、「きっかけ」にすぎません。

しかも、所有権を放棄した時点でその物に対する責任が雲散霧消するわけではなく、「最終処分が終わるまでは、排出事業者に処理責任が残り続ける」ことは、皆様がよくご存知のとおりです。

所有権放棄の例を挙げたかったのであれば、「リース契約満了後のリース物件の返却」等を挙げた方が適切だったと思います。

でも、これだと新聞読者の大半には意味不明かもしれませんね(苦笑)。

以上、批判ではなく、些細な文章表現から感じた違和感を基に、テキトーな認識や思い込みの危険性を分析したつもりです。

「お前ごときが偉そうにマスコミを批判するな!」では、読者の方の思考発展の可能性を閉ざすだけとなりますので、「そういう視点もあるのね」と面白がってお読みいただけると幸いです。

あ、この注釈をセミナーでもしておけば、怒る人は10%よりもさらに少なくなりそうだな。
早速、次のセミナーから取り入れたいと思います(笑)。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ