そもそも産業廃棄物ではなかった

2018年7月3日付 Security NEXT 埼玉で廃棄したはずの個人情報、群馬で発見 – 大東建託

大東建託は、産廃業者へ引き渡した個人情報含む書類が、第三者の私有地に放置されていたことを明らかにした。発見された書類はいずれも回収している。

同社によれば、2017年12月、埼玉北支店の移転にともない、廃棄物として産廃業者へ引き渡した書類の一部が、2018年3月12日に群馬県高崎市内の第三者の私有地で発見されたという。土地所有者が高崎市役所に相談。同市経由で同社に連絡があり問題が発覚し、同社は同月19日に土地所有者へ謝罪するとともに、書類を回収した。

建物賃貸事業に関わる数種類の書類が含まれており、氏名や住所、生年月日、資産情報、取引情報など約9000件の個人情報を記載。顧客から預かった住民票や印鑑証明書、免許証のコピー、所得証明書、源泉徴収票、残高証明書などの書類も144件含まれる。

同社は、移転時における書類の紛失について否定。一方、本来個人情報を含む書類について廃棄方法が定められているが、事務所移転時の廃棄については、他廃棄物とあわせて処分することもあり、手続きが明確化されていなかったことが原因だとしている。

この記事は、報道対象の企業が廃棄物処理法違反していたことをうかがわせる内容となっています。

記事の内容が100%事実だとすると、当該企業は、一般廃棄物を産業廃棄物として産業廃棄物処理業者に処理委託していたことになるからです。

ただし、大手新聞社を含む昨今の記者は、廃棄物処理法の規制趣旨を調べずに記事を書く傾向にありますので、事実の細かい部分で誤認があった可能性があります。

よくある誤認は、一般廃棄物処理業者と産業廃棄物処理業者、そして古紙回収業者をひっくるめて「産業廃棄物処理業者」と総称してしまうことです。

一般廃棄物処理業者と産業廃棄物処理業者は日本人と米国人くらいの違いがあるのですが、米国人を日本人と総称するくらいの重大な間違いです。

国籍だとイメージしにくいかもしれませんので、「地球人」と「火星人(←存在するのか?)」としても可です。

これらの事情を考慮すると、この記事から読み取れる事実は下記の2つのいずれかになります。

すなわち、「報道対象の企業が委託基準違反をしていたという可能性」と「記事執筆者の事実誤認」のいずれかです。

いずれにせよ、印鑑証明書や免許証のコピー等は、産業廃棄物として大東建託が発生させる可能性はゼロです。

なぜなら、産業廃棄物となる紙くずは、

建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、パルプ、紙又は紙加工品の製造業、新聞業(新聞巻取紙を使用して印刷発行を行うものに限る。)、出版業(印刷出版を行うものに限る。)、製本業及び印刷物加工業に係るもの並びにポリ塩化ビフェニルが塗布され、又は染み込んだものに限る。(廃棄物処理法施行令第2条)

と、建設工事に伴って発生した物に限定されているからです。

そのため、それらの紙ごみを廃棄する場合は、産業廃棄物ではなく(事業系)一般廃棄物として処理をしなければなりません。

そうなると、記事で書かれている
「事務所移転時の廃棄については、他廃棄物とあわせて処分することもあり」は、
同社が行っている手続きに廃棄物処理法違反があったことをうかがわせる内容になっています。

同社の不適切な現状の運用が唯一合法になるケースは、
紙ゴミを、古紙回収業が主体だが、たまたま産業廃棄物処理業の許可も持っている事業者に処理委託する場合でしょうか。

ただし、この場合、事務所移転時に発生する廃棄物には、かなりの一般廃棄物が含まれているはずですので、一般廃棄物処理業者にも処理委託していなければなりません。

他人の土地に紙ごみを不法投棄するくらいの業者ですから、古紙回収業者ではなかったものと思われます。

「廃棄物はぞんざいに扱われる可能性があるので廃棄物処理法で規制する」を体現した事件となりました。

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