神戸市の外郭団体による不法投棄
2020年3月中旬に発覚していた、牧場による「動物の死体」の不法投棄事件の被疑者が書類送検されました。
2020年6月16日 NHK 「廃棄物処理法違反疑いで書類送検」
神戸市の六甲山牧場で飼育員が敷地内に羊などの死骸を不法に埋めていた問題で、警察は牧場の幹部を含む11人を廃棄物処理法違反の疑いで書類送検しました。
神戸市灘区にある六甲山牧場では、飼育員が保健所に連絡することなく羊やヤギなどの死骸を埋めていたことがことし3月明らかになり、警察が不法に遺棄したとして捜査していました。
その結果、平成27年からおととしにかけて敷地内に少なくとも羊とヤギ合わせて7頭の死骸を埋めていたほか、7000リットル余りの牛乳を廃棄していたことが分かったということです。
このため警察は、牧場の幹部2人と飼育員ら9人の合わせて11人と牧場を運営する神戸市の外郭団体「神戸みのりの公社」を、16日、廃棄物処理法違反の疑いで書類送検しました。
警察によりますと、調べに対して幹部らは「手間がかかるので捨てた」などと話しているということです。【「神戸みのりの公社」は】
六甲山牧場を運営する神戸市の外郭団体「神戸みのりの公社」の長沢秀起理事長は「深くおわび申しあげます。今後、よりいっそうのコンプライアンスの徹底を図り、再発防止、適正で安全・安心な管理運営に努めてまいります」とするコメントを出しました。
「手間がかかるので捨てた」というコメントに闇深さを感じます。
神戸市の外郭団体である以上、死んでしまった動物の死体を処分委託する経費については確保されていたはず。
それにもかかわらず、「面倒だから」という理由で安易に不法投棄してしまっているため、不法投棄としてはかなり悪質な部類に入るように思います。
また、もう一つ許しがたいのは、「7000リットル余りの牛乳を廃棄」していた点。
ご存知の方も多いと思いますが、牛乳が腐敗すると、ものすごい悪臭が発生します。
牧場内の敷地への不法投棄とは言え、牛乳の腐敗臭がすごかったのではないでしょうか。
さて、一番の問題は、
昨日や今日にできたわけではない牧場において、廃棄物管理機能がまったく働いていなかった点です。
Wikipedia情報では、
1956年 放牧を開始
1976年 一般への開放を開始
とあり、牧場開設後、半世紀以上が経過していることになります。
もちろん、1956年当時は廃棄物処理法がありませんでしたが、
近年になり急にこのような古典的不法投棄が起こったのか?
それとも、昔から不法投棄が常態化していたのか?
一過性のものではないのであれば、一方的な研修をするだけでは、違反の再発を防ぐことは困難ではないかと思います。
« 施設の使用権原(平成5年3月31日付衛産36号より抜粋) 建設廃棄物処理と工期の関係 »
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2020年6月19日 | コメント/トラックバック(4) | トラックバックURL |
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コメント
いつも尾上先生のブログを拝見し、勉強させていただいています。
私もこのニュースに衝撃を受けたことを記憶しております。少し前の記事へのコメントで大変恐縮ですが、畜産動物を調べていく中で疑問に思ったことがあり、質問させていただきます。
今回のように不法投棄の行為者が判明した場合は良いですが、例えば自分の土地に畜産動物の死骸が不法投棄せれ、行為者が判明しない場合はどのような処理を行うことになるのでしょうか?下記のような認識で良いでしょうか?
考えられるのは
①明らかに畜産業から出た産廃であり、土地管理者が産廃業者で処分
②一般ごみで自治体の処分場に埋め立て
③土地管理者が自分の土地に埋葬(供養)
また、それぞれの場合に化製場法を適用する必要があると思います。
①産廃業者が化製場法の許可を取る必要あり
②自治体の処分場が化製場法の許可を取る必要あり
③土地管理者が化製場法の許可を取る必要あり
①だと不法投棄の被害者が可哀想ですし、それぞれ化製場法の許可というハードルが出てきて、なんだかすべて不可能な気がしてきます。
廃掃法は守備範囲が広く、他法令と被る部分があるのでとても難しいですね。以前、先生のブログでも紹介していた「へい獣処理場における処理」で動物の死体のややこしさも知り、さらに困惑しています。
化製場法
1条 この法律で「獣畜」とは、牛、馬、豚、めん羊及び山羊をいう。
3 この法律で「死亡獣畜取扱場」とは、死亡獣畜を解体し、埋却し、又は廃却するために設けられた施設又は区域で、死亡獣畜取扱場として都道府県知事の許可を受けたものをいう
2条 2 死亡獣畜の解体、埋却又は焼却は、死亡獣畜取扱場以外の施設又は区域で、これを行つてはならない。ただし、食用に供する目的で解体する場合及び都道府県知事の許可を受けた場合は、この限りでない
コメントいただき、ありがとうございました。
自分の土地に捨てられた場合、畜産農業から発生した動物の死体ではないため、産業廃棄物ではなく一般廃棄物に該当することになります。
ただし、市町村の清掃工場ではそのような廃棄物を処理することは困難であるため、実際には産業廃棄物処理業者で「動物の死体」の許可を持つところに処理委託するよう市町村から指導されるのではと思います。
廃棄物処理法の規定には反しますが、急いで不法投棄物を処理する必要性がある場合は、処理できるところで処理を進めるしかないように思います。
もちろん、最寄りの行政庁にありのままを打ち明け、慎重に協議を行うことが大前提ではありますが。
お返事ありがとうございます。
動物の死体という処理施設が限られた廃棄物かつ、腐敗など緊急性がある場合は完璧に法律通りとはいかないこともあり得そうですね。
もう一点だけ質問させていただきたいのですが
動物の死体を取り扱う産業廃棄物処理業者は化製場法の「死亡獣畜取扱場」の許可が必要になるのでしょうか?
それとも、死亡獣畜取扱場以外の施設ということで、法第2条第2項ただし書きの部分で、別途都道府県の許可を受けているのでしょうか?
もしくは、廃掃法を適用するから化製場法は考えないということでしょうか?
行政庁に確認すべき内容ですが、先生のご意見もぜひお聞かせください。
「化製場等に関する法律」には実務的に関わったことがありませんが、
同法第一条に「この法律で「獣畜」とは、牛、馬、豚、めん羊及び山羊をいう。」とありますので、
これらに該当する物を焼却する場合、「死亡獣畜取扱場の許可」が必要になると考えます。
逆に、養鶏農家から出た鶏の死体については、化製場法の対象とならないので、産業廃棄物処分業の許可だけで処分可能と考えます。