まだまだ続くアスベストの呪い

昨年末に、ニトリやカインズ等の大規模量販店で販売していた珪藻土を原料とした製品に、微量のクリソタイル(白石綿)が混入していたことが発覚し、急ぎ製品の回収が進められているところです。

回収の対象となる珪藻土使用製品は、バスマットやコースター等、ありふれた日常品であり、なおかつ使用頻度が比較的高いものであるため、迅速に全量を回収する必要があります。

製品の中にクリソタイルが練り込まれたままの状態でそれが外部に飛散しない限り、危険性はありませんが、物の寿命は永遠ではないため、破損により、アスベストが飛散する可能性はゼロではありません。

というよりは、時間の経過とともに、アスベスト飛散のリスクは増大していくという方が正確でしょう。

クリソタイル混入の経緯については、「中国の製造工場での混入」や「大昔に購入した資材への混入」等、複数の混入ルートの存在が徐々に明らかにされています。

では、この問題が一番初めに発覚したきっかけは何だったのでしょうか?

消費者団体からの追及?

あるいは、販売元の自主公表?

はたまた、厚生労働省等の政府機関からの注意喚起だったのでしょうか?

自主回収事件に関する記事をいくつか検索するうちに、下記のアジアプレス・ネットワークの取材記事に行き当たり、ようやく疑問が解消しました。

2021.01.27 「前代未聞のアスベスト検出品大量版売 ニトリなどの珪藻土製品になぜ混入したのか?

(大阪府貝塚)市政策推進課によれば、もともと同社(筆者注:バスマットとコースターの製造者)が2020年2月に端材の処分を依頼しようとした際、産業廃棄物(産廃)処(筆者注:「分」の抜けと思われる)業者から石綿含有の有無を聞かれたことが発覚のきっかけだ。同社委託では石綿「不検出」だったが、市が「念のため」独自に分析委託したところ、安衛法の基準である重量比0.1%を超えるクリソタイル(白石綿)を検出した。

石綿含有の有無が割れたため同社が厚労省に相談したところ、同省が改めて分析を委託。やはり石綿含有を確認した。そして同11月27日、同社は約2万6000個の自主回収を発表することになった。

「製造者から処理委託を受けた産業廃棄物処分業者の指摘」が、問題発覚の最初の発端だったのですね。

委託予定だった産業廃棄物の形状や大きさは不明ですが、処分を急がず、アスベスト混入の可能性に気付ける処分業者は、産業廃棄物処理業者としては非常に高いレベルの仕事をしていると断言できます。

それは、「従業員の安全重視」「地域住民に迷惑をかけないための不断のチェック」「廃棄物処理法性の熟知」という、3つの要素をすべて兼ね備えた業者でなければ、そうした疑問をまず抱かないからです。

この産業廃棄物処理業者が石綿混入の可能性に気づかなければ、石綿含有製品はいまだに流通し続けていたことと思います。

事態がより悪化することを防いだ点においては、この産業廃棄物処理業者の功績は非常に大きなものがあります。

是非とも、行政当局には、この業者の功績を表彰していただきたいと思います。

ちなみに、今回の回収対象となった製品のように、「重量で0.1%を超える石綿を含有するもの」については、「石綿含有産業廃棄物」として、無害化処理できる処分業者に委託する必要がありますし、
委託契約書において、「石綿含有産業廃棄物を含む」旨を明記することが、排出事業者の義務となっています。

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