布団の回収サービス・・・

布団は生活必需品ですが、多くの市町村においては、月1回程度の回収日しか回収対象とならない、なかなかかさばる代物です。

そんな厄介者の「布団の回収サービスを始めました!」というプレスリリースがあったので、大いなる危惧と若干の期待を持って記事を読み進めてみると、
やはり期待どおりに(?)、廃棄物処理法的には「やったらアカン」事業内容でした。

当ブログでは他人を裁くことはしない(批評はする)と決めておりますので、社名やURLを掲載して断罪することはいたしませんが、
「4千円で、布団の圧縮袋その他のセットを購入後、圧縮パックに詰めた布団を運送便で当社まで発送するだけ」という、工夫をした形跡が見うけられる売り方をなさっています。

この一行でピンときた方が多いと思いますが、
このまま事業を始めると、「一般廃棄物処理業の無許可営業」に該当し、「5年以下の懲役、もしくは1千万円以下の罰金、または併科」の対象となってしまいます。

一般廃棄物たる布団を、布団の所有者から「処理費に相当する金銭」を徴した上で回収していることになるからです。

こうしたケースでは、「廃棄物ではなく、原材料の仕入れなんだ!」という認識の場合が多いのですが、
「圧縮袋や運送伝票」を「4千円」で買わせている以上、
「仕入れ」ではなく、「廃棄物処理費を徴収している」としか扱えません。

「仕入れ側の対価の支払い」が根本的に重要な要素となりますが、そこがきれいに抜け落ち、「廃棄物の回収」が「仕入れ」へと脳内ですり替えが起きています。

一般廃棄物の場合、個別の市町村すべてから一般廃棄物処理業の許可を受けるか、環境大臣の広域認定を受けない限り、こうした前払い制の廃棄物回収はすべて違法となります。

しかしながら、個別の市町村すべてから許可取得は現実的に不可能ですし、今のところ、布団は広域認定の対象として認められていません(環境省告示で対象が限定列挙されているため)。

「PCの宅配便回収サービス」に触発されたのかもしれませんが、
あれは「小型家電リサイクル法」の認定を受けた企業が行っている、れっきとしたビジネスですので、
同じ土俵に経つのであれば、僭称ではなく、正式に「許可」か「認定」を受ける必要があります。

「布団を1円で購入して、加工品を100万円で売る」場合なら、「仕入れ」とみなせる可能性はありますが、
現実には、「仕入れ値」と「販売額」の間に、こうした著しい不均衡が発生する状況は、芸術品やブランド品以外では、現代社会においてはほぼあり得ません。
※無価値な物を高額で売りつける詐欺は当然除く。

結局のところ、「対価の問題」を解決しない限り、「社会問題を解決するのだ!」という熱情の多くは、「廃棄物処理法」によって打ち負かされることになります。

身も蓋もない話ですが、これが現実ですので、その現実を受入れた上で、違法とならない方法を考える必要があります。

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コメント

  1. 小林直樹 より:

    いつもメルマガ読ませていただいております。質問させていただきたく、宜しくお願い致します。布団回収サービスの件ですが、これは一般廃棄物の許可ぎ有れば合法として実行可能なのでしょうか?または不可能で有れば、実行可能な方法はあるのでしょうか?

  2. 尾上雅典 より:

    コメントいただき、ありがとうございます。

    一般廃棄物処理業の許可は、布団回収を行うすべての市町村から個別に取得する必要があるため、現実的には不可能です。


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