「認識の甘さ」の誤用

和歌山県職員による、かなりおバカな不法投棄事件が起きました。

2021年12月9日付 紀伊民報 「医薬品を敷地内に廃棄 和歌山県畜産試験場、汚染土壌は回収

 和歌山県は9日、県畜産試験場(すさみ町)の職員が、かつて畜舎の消毒に使用していた第2類医薬品「クレゾール石ケン液」を敷地内で不適正に廃棄したと発表した。8日から業者に委託し、汚染土壌を回収しており、環境への影響はないという。

 県によると、試験場は農機具舎の改修工事のため、中の物品を運び出す作業をしていた。その中で、男性職員3人が2日、500ミリリットル瓶に入った医薬品119本計59・5リットルを人目に付きにくい場所まで運び、土の上にまいて廃棄した。別の職員が6日、空の瓶を発見し、県畜産課に通報したことで発覚した。汚染範囲は約15メートル×5メートル。

 試験場によると医薬品は30年以上前のものとみられ、現在は使用されていない不要なものだが、本来は、専門の業者に処理を委託すべきで、3人もそのことを把握していた。3人は「医薬品処理の認識が甘かった」などと話しているという。

土に廃液をまくとは、かなり荒っぽい不法投棄です。

「認識が甘かった」とは、「何らかの備えの必要性は認識していたが、状況の見立てを誤り、不完全な対策しか講じなかったために、想定よりも悪い結果になった」ときに使う言葉です。

そのため、和歌山県畜産試験場のように、
・廃液の在庫管理をせず
・処理委託をしようとした形跡すらなく
・無造作に不法投棄した
場合は、「適正処理しないといけないという認識が最初から欠如した状態」であり、認識が存在しなかった以上、「甘かった」は日本語の誤用となります。

ここは正直に、「適正処理すべきという認識をしていませんでした」と吐露すべきだったのではないでしょうか。

今回は警察が事件として送致したわけではないため、和歌山県内部で内々に事後処理されるのだろうと思いますが、同種の事件の再発を防ぐために明らかにすべきことは

「そもそも、産業廃棄物の管理規程が存在したのか?」です。

実行者が「認識」という甚だ主観的な言辞を弄している以上、おそらくまともな管理規程は存在していなかったように思われます。

「産業廃棄物の処理は、県が契約している〇〇という業者に処理委託をし、委託契約書を作成・保存云々」という規程があったならば、「規程が遵守されなかったことを遺憾に思います」という、これまたテンプレートのコメントが所管課等から出たはずだからです。

また、「赤信号皆で渡れば怖くない」式に、3人の大人が共謀して不法投棄したところに、深い闇が感じられます。

拙ブログ 2021年12月3日付記事 「コンプライアンスにおける三悪」で指摘した「これくらいなら」と「見つからなければ」の複合形態のように思えます。

犯罪の未遂ではなく、既遂ですので、少なくとも減給、懲戒免職なら「天晴 よくやった」と逆に和歌山県が称賛されるかもしれません。

最後に、個人的好奇心がそそられたのが、
6日(月)に不法投棄に気づいた畜産試験場の職員が、畜産試験場のトップではなく、県庁の畜産課に通報している点です。

捨てられた物が畜産試験場の備品であることにすぐ気づいたと思いますが、普通ならば畜産試験場内で撤去や行為者の責任追及をするところです。

しかし、その内部での解決を図らず、一足飛びになぜ県庁に通報したのか?

畜産試験場内で法律違反が続いており、「県庁に通報しないと埒が明かない」と感じたからなのでしょうか?

あるいは、捨てた3人と見つけた人との間に、個人的な遺恨があったのでしょうか?

はたまた、「組織内で違法行為を見つけたときは、県庁の所管課に通報せよ」という「認識」が共有されていたのでしょうか?

個人的本命は「まさか内部の人間による犯行と思わなかった」です(笑)。

汚染範囲が15メートル×5メートルとのことですので、掘削した汚染土壌の量は少量というわけではなさそうです。

結果的には、廃液(廃油)として処理委託する以上のコストが掛かるようになったのは間違いありません。

ほぼ確実に、和歌山県から不法投棄をした職員3人に費用求償がされるものと思います。

1人当たり20~30万円というところでしょうか?

いやあ 不法投棄って 本当に割に合わない犯罪ですね。

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