コンプライアンスにおける三悪

独立開業した当初から、コンプライアンス面で発してはいけない言葉が3つあると言い続けていますが、まったく広まりません(笑)。

それは、
「これくらいなら(許されるだろう)」
「他もやっている(から罰せられないだろう)」
「見つからなければ(問題にならない)」

の3つです。

いずれも日常会話でよく使われる常套句ですが、自分の行為を正当化する際には極めて便利な言葉です。

脱税の場合は、「見つからなければ」の比重が高く、「これくらいなら」も幾分か含まれた心情であろうと思います。

廃棄物処理実務に関する相談の際にも
「法律違反の部分があることはわかりましたが、行政からそれを問題視されることはあるのでしょうか?」と、真面目に質問されることがよくあります。

現実には、法律違反をしたとしても、それを瞬時に行政や警察が確知することは困難ですので、犯罪として必ず罰せられるわけではないと言った方が正確だと思います。

しかしながら、それは脱税と同じで、合法的な手段として当局に認められたわけではなく、「ただ単に見つかっていないだけ」ですので、「違反と気づいた現在を好機とし、今すぐ是正をして、遠くない将来に摘発されるリスクをなくしましょう」と、真剣にお願いしております。

また、業界としての歴史がそろそろ半世紀近くになる廃棄物処理業界では、「これくらいなら」と「他もやっている」成分多めの会話をよく聞きます。

実際のところ、廃棄物処理の現場では、一般廃棄物か産業廃棄物かについて、白黒をはっきりつけることが不可能な場合が多々あります。

「一刀両断にできないので、どちらとして扱うべきか」を日々模索し続ける必要がありますので、それもやむなしという局面がたしかにあります。

しかし、「不法投棄」や「野外焼却」には、「これくらいなら」というすそ切りラインはありませんので、たとえ燃やした物が「ティッシュペーパー1枚」だったとしても、「野外焼却」であることに違いはありません。

廃棄物処理法の罰則には、このような裁量の余地が存在しない刑罰が数多く列挙されています。

産業廃棄物管理票(マニフェスト)の運用なども、「これくらいの違反ならOK」という裁量の余地はありませんので、廃棄物処理法に書かれたとおりの運用をしないと、法律違反にすぐ直結してしまいます。

「他もやっているから」が自己正当化の言い訳でしかないことは、説明する必要が無いと思います。

さて、この「三悪」に対処するためには、まず「三悪を三悪と認識すること」が必要です。

「今『他の会社もやっていることだから』って言ったよな。これは危ない兆候だぞ。」と気づけなければ、その後の是正措置を思いつくことも有り得ないからです。

ゆえに、まずは「三悪の言葉を使った自分を意識する自分」を意識的に作ることが必要と言えます。

「では、どうすれば自分の行動を自分自身で冷静に把握できるようになるのだ?」という方には、今すぐできる方法をご紹介します。

それは、「横断歩道の信号を守る」ということです。

おそらく、東京にお住い、あるいは働いている人にはあてはまらない方法だと思いますが、
こと大阪市内においては、横断歩道の信号を守る人がほとんどいないため、あえて赤信号で歩道を渡らないという選択をすると、「他の人が渡っているのにあえて渡らない自分」「車が来ていなくてもあえて渡らない自分」を客観的に認識できます。

あるいは、車を運転する際には、「歩行者がいる横断歩道の手前では必ず停車する」を徹底するのも良いと思います。

こちらは、全国各地で「他の人が行わない正しい行為を実践している自分」を認識できると思います。

いずれも法律的には当たり前の行動ですが、日常生活においては、驚くほど多くの人に破られているルールですので、自分の弱さと強さの両方に同時に直面できる機会となります。

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