昆虫による食品廃棄物リサイクル

幼少期は、カブトムシをはじめとする昆虫の飼育が大好きでした。

成虫を捕まえて、卵を産むまで餌をやり続け、さらに卵から幼虫を孵化させるまでが一つのサイクルとなりますが、実際に幼虫の孵化まで成功したのはカブトムシだけでした。

カマキリやコガネムシ等いろいろな昆虫を捕まえて、産卵までは成功したものの、卵を無事孵化させる最適な環境条件の知識が乏しかったため、孵化の瞬間を観察することはできませんでしたが、飼育ケースという人間が用意した環境下で起きる生命サイクルの循環を観察することが至福でした。

そんな元虫好き少年の心を思い出させるニュースに接しましたので、ご紹介したいと思います。

2021年12月20日付 日本食糧新聞 「産業廃棄物処分業のハーツ、「ミズアブ」で次世代タンパク質製造

産業廃棄物処分業のハーツ(名古屋市中区)は、弁当や野菜くずなどの食品廃棄物で、アメリカミズアブ(ミズアブ)の幼虫を飼育する食品リサイクル事業に着手した。タンパク質が豊富な幼虫は米国でペットフードに使われており、多くの可能性を秘めている。また、「大食漢」で体重の2倍の量を20日食べ続けて成長するため、資源循環の面でも魅力的だ。同社は今後、養殖設備を整えると同時に配合飼料メーカーらと実用化に向けたテストを重ねていく。

体重の2倍の量の食品廃棄物を20日食べ続けて成長する上に、大部分をタンパク質として再利用できるのであれば、非常に効率の良いリサイクルとなります。

アメリカでは、ミズアブの幼虫を「フェニックスワーム」とも呼ぶそうですが、もちろん不死ではなく、「多数が孵化して、そのまま多数が成虫となる」繁殖力の高さをとらえて「フェニックス」と表現したのでしょうか?

日本食糧新聞のサイトには、「乾燥させたミズアブの幼虫」の画像が掲載されていますので、興味のある方は是非閲覧してみてください。ただし、誰もがカワイイと思う画像ではないことは十分ご承知おきください(笑)。

アメリカと名が付くくらいですので、元々の生息地はアメリカ大陸とのことですから、「外来種になるのかな?」と若干不安に思いましたが、日本には1950年頃に流入し、本州その他の広い地域で生息しているそうです。

外来種と言えば外来種ですが、既に日本中の大部分に生息域が広がっていますので、それほど神経質に扱う必要はなさそうです。

なにしろ、昔の汲み取り式の便所でよく発生した「便所バチ」が、このアメリカミズアブだったそうですので、日本人との付き合いも70年くらいの歴史があるということになります。

「コンポストボックス配布の代わりに、ミズアブの幼虫を配布した方がリサイクル効率が高いのでは?」と一瞬考えてしまいましたが、この場合、成虫になるまで育ててしまうと、ミズアブが大発生してしまうことになりますので、幼虫の状態で引き受けてくれる事業者が出てこない限り、「一般ピープルが手軽に幼虫で食品リサイクル!」というわけにはいかなさそうです(残念)。

さて、アブの幼虫を好んで食すペットとはどのような動物になるのでしょうか?

同じような昆虫の幼虫であるミルワームを好む動物としては、鳥やハムスター、大型熱帯魚等がいますので、これらの動物がメインターゲットになるのだろうと思います。

あるいは、単純にタンパク質として加工をするだけであれば、人間以外のもっと多様な動物の飼料とできそうです。
記事を読む限りは、こちらの方が主要な利用用途なのだろうと思います。

ちなみに、昆虫に食べさせることを目的として廃棄物処分業の許可を取得することは、現行の法制度下では困難です。

一日当たりの処理能力の算定はどうやって行うべきか、
また幼虫を処理施設と考えて良いか、
という実務的な大問題があるからです。

とはいえ、考案者のハーツ社さんの心意気は、そんなスケールの小さい話ではなく、地球規模の社会問題を解決するために実証実験をされているものと推察しますので、このまま実現化に向けてまい進していただきたいと思います。

崇高な目的のために自腹で研究を進める人・会社を心より尊敬します。

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