盛り土規制がようやく強化か
盛り土に関する規制がようやく強化されることになりそうです。
2021年12月21日付 日本経済新聞 「盛り土657カ所、安全策確認できず」
7月に静岡県熱海市で起きた土石流災害を受け、各自治体が実施する盛り土の総点検で、政府は20日、全国657カ所で災害防止などの安全措置が確認できなかったとする暫定結果を発表した。大雨などで崩落する恐れもあり、詳細な調査を進める。同日開催の有識者検討会で報告した。
検討会は危険な盛り土造成を包括的に規制する法制度の創設を求める提言案をまとめた。政府は提言を踏まえ、来年の通常国会で関連法改正案を提出する方針。
ここでいう「有識者検討会」は、内閣府が設置した「盛土による災害の防止に関する検討会」を指します。
岸田首相の就任直前に第1回会合が開催されていますので、岸田首相の肝いりで発足した検討会というわけではなさそうです。
同検討会の公開資料を読むと、新たな規制方針として、
・法律による全国一律基準での規制
・罰則の新設や強化
・盛り土を許可制に
・規制対象区域の設定
等の現時点で考えられる締め付け策のすべてが盛り込まれています。
盛り土を規制することが必要という点は衆目の一致するところですが、規制強化後に出現するリスクを想定することも必要と思います。
そのリスクとは、「ゲリラ不法投棄」ならぬ「ゲリラ盛り土の多発」です。
いかに規制を強化しようとも、建設残土をどこかに置き続ける必要性は絶対に無くなりません。
建設工事で発生する残土を日々運び込む場所が無くなると、日本中で建設工事がストップすることになります。
規制強化や規制に違反した者を処罰する仕組みは不可欠ではありますが、締め付けを強化すればするほど、持ち込み先が見つからない残土を増やすことになり、「残土の捨て逃げ」を増やすきっかけになります。
「建設残土」と「汚泥」を含めた「建設副産物」をできるだけ建設工事によって再利用できるように、廃棄物処理法の規制緩和をして、建設現場の外に出る建設副産物を減らす対策を取らないと、今よりもっと危険なゲリラ盛り土が急増するおそれがあります。
私見では、建設工事に付随して設置する産業廃棄物処理施設については、設置許可不要としても問題は生じないのではと考えています。
具体例としては、「汚泥の脱水施設」がもっとも最適な例かと思います。
廃棄物処理法の規制は、盛り土規制とは真逆で、「物の発生元」によって、一律に「不用物」と決めつけて例外を許さないという、なかなか頑迷な部分がありますので、この機会に、廃棄物処理法の具合の悪い個所を補修してはどうでしょうか。
まぁ、有識者様検討会では、廃棄物処理法の問題点についてはまったく指摘されていませんので、その可能性はゼロだと思いますが(苦笑)。
日本経済新聞の記事では、全国の盛り土状況の点検結果が引用されています。
政府は8月、都道府県に対し、総点検を実施するよう要請した。対象の約3万6千カ所のうち、11月末までに約2万8千カ所で終了。計657カ所で水抜き対策など必要な安全対策が確認できなかった。造成許可の手続きがなかったり、手続き内容と相違点が見つかったりするケースも確認された。何らかの問題が見つかったのは、安全措置が確認できなかった場所を含めると、1375カ所に上った。
記事本文では触れられておりませんが、表形式で、「廃棄物の投棄などを確認」された場所が「137カ所」とされています。
調査対象2万8千カ所に対したったの137カ所と、比率にすると「約0.5%」しか、廃棄物が盛り土に混入していないことになっています。
これはおおよそ信じがたい数値です(苦笑)。
盛り土の大部分は建設残土を使用して行われる以上、廃棄物がまったく混入しない盛り土は、現実にはほぼありません。
考えられることは、「廃棄物」を「巨石レベルのがれき」や「立木としか言えない木くず」に限定して、盛り土の混入物を意図的に緩く解釈した可能性です。
おそらくこの調査をした部局は、各自治体の土木部局でしょうから、廃棄物部局が現場を見ると、もっと違った結果になったはずです。
ただそうなると、「木片1つ」の混入でも、「廃棄物の投棄だ!」と断罪されそうですので、それはそれで実態とはかけ離れた調査結果になったかもしれませんが。
現状の廃棄物処理法の規制では、「混入比率の基準」はほとんど存在せず、「一かゼロか」という二元論で一刀両断されてしまうため、やはり、廃棄物処理法の問題点の修正も不可欠ではないかと思います。
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2021年12月21日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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