火災からの復旧に向けた現在進行形の事例(宇都宮市)

どこの自治体の清掃工場でいつ起きてもおかしくない火災事故です。

2022年2月2日付 下野新聞 「ごみ焼却施設で火災 搬入中止、再開めど立たず 宇都宮

 1日午前1時50分ごろ、栃木県宇都宮市茂原町のごみ焼却施設「クリーンパーク茂原」で、一時保管中の可燃ごみが燃えているのを運転委託事業者が見つけた。ごみ約2千トンや機器を焼き、約16時間後の午後6時に鎮圧した。火災を受け施設は同日、ごみの受け入れを中止した。2日以降も施設再開のめどは立っていないが、家庭ごみの回収は通常通り行う。原因は調査中という。

 市廃棄物施設課によると、火災は可燃ごみを焼却前に保管する「ごみピット」(高さ34メートル、奥行き16メートル、幅40メートル)内で起きた。計9カ所の搬入口から1カ所に集まる構造で、焼却炉の点検に伴い1月27日以降は貯留が続いていた。自動火災報知機が鳴ったため、事業者が放水銃などで消火を試みたが収まらず、約1時間後に119番した。

火災の発生原因はまだ確定していないものの、朝日新聞の報道によると、
2022年2月10日付 朝日新聞 「宇都宮市のごみ処理施設火災、復旧に半年以上

 消防が消火活動を始めたのは出火から1時間以上経ってからで、施設は消防から早期通報の指導を受けたという。出火原因は不明だが、市はライターやスプレー缶などが発火原因とみている。

とのことです。

また、火災の被害としては、同じく朝日新聞の報道によると、

火災でごみ貯留場のクレーン2基、脱臭装置2台、放水銃などが焼損

となっています。

ごみピットから焼却炉にごみを投入するために用いるクレーンが破損してしまうと、焼却炉は無傷であったとしても、焼却炉にごみを投入できなくなるため、ごみ処理が不可能となってしまいます。

清掃工場で火災が起きると、このクレーン焼損により、施設の稼働停止期間が長期に及ぶことがほとんどです。

火災が発生した場合には、クレーンが弱点となることは明らかですが、数百度から千度を超える火災の炎に対し、完全無欠な耐火性能をクレーンに施すことは、現実的には非常に困難と思われます。

クレーンそのものは燃え上がらないとしても、配線やケーブル等を高温の炎から守る術が無いからです。

ライターやスプレー缶といった日常的に使用される小さな製品であっても、たった一つで数千万円、あるいは数億円の損害を発生させる原因となり得るわけですから、可燃ごみに混入させる危険性を消費者全員が認識する必要があります。

不幸にも、火災が起きた施設が、宇都宮市における1日の焼却量の3分の2を占める「クリーンパーク茂原」であったため、宇都宮市の一般廃棄物処理は災害発生時と同様の苦境を迎えています。

再び、朝日新聞の報道を抜粋

 市は現在、ごみ排出量の5割削減や生ごみの水切り、分別の徹底などを市民に呼びかけている。茂原町の施設で賄ってきた焼却処理は、他の自治体や民間施設に依頼している。

宇都宮市民の方、施設復旧に勤しむ職員の方においては、大変な状況とお察しします。

火災発生後1週間経つか経たないかという短期間で、現状の廃棄物処理をなんとか進めるために宇都宮市当局が実行しつつある対策は、火災や災害にいつ巻き込まれるかわからない他の自治体・事業者にとっても、大いに参考になると思いましたので、少し整理しておきたいと思います。

これについても、朝日新聞の記事が具体的、かつ簡潔に報道しているので、該当部分を抜粋します。

 宇都宮市では上三川町と下野市石橋地区を含め、月に約1万3400トンの焼却ごみを排出する。クリーンパーク茂原では全体の68%にあたる約9150トンを処理しており、この分の搬入先の確保が必要になっている。

 市では現在、県内の民間2施設や他の2自治体で月2千トン分のごみ処理を確保した。処理しきれない残りのごみについては、最終処分場のエコーパーク下横倉(下横倉町)で一時的に仮置きしている。当面、市は3千トン分の確保をめざし、さらに県外も含めた受け入れ先の自治体施設を探している。

まずは、1月あたりの受入れ量約9千トンという、言わば大本の発生量自体の削減を市民に要請。
呼びかけとしては「5割削減」ですが、いきなり排出量を半減させることは非常に困難ですので、「2割から3割削減できれば御の字」というところでしょうか。

3割削減できたとして、1月あたり約6千トンのごみ処理量を確保する算段が必要となります。

次に、「民間事業者2施設」と「近隣自治体2か所」に委託をし、この委託で1月あたり2千トンのごみ処理先を確保できましたので、残りは約4千トン。

残った約4千トンを、宇都宮市の最終処分場に仮置きし、清掃工場復旧までの時間をしのぎ切るという計画ですね。

最終処分場の埋立面積は2.6haと東京ドームの約半分の面積ですから、広そうに見えてもかなりギリギリなスペースのやりくりになるのではないでしょうか。

宇都宮市としては、他の自治体や事業者への委託量を1月2千トンから1月3千トンまで増やす計画とのことですので、それが成功した暁には、最終処分場での仮置きスペースにも若干の余裕が発生します。

もしも宇都宮市において「他の自治体及び民間事業者」との連携が無ければ、火災事故の発生後、宇都宮市のごみ処理は4月を待たずに破綻していたと思われます。

宇都宮市の事例にならい、
平時のうちに、今後起きるかもしれない火災や天災の発生を想定し、半年分のごみ処理をどうやってこなすかを、近隣自治体及び民間事業者を交えて綿密なシミュレーションをしておくのが良さそうです。

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