プラスチック資源循環促進法の目指すところ(第2回)

プラスチック資源循環促進法の狙い(第1回)

第1回の「プラスチック資源循環促進法の狙い」では、同法の目指すところを端的に示した図として、パンフレット掲載の「制度の概要」をご紹介しました。

「設計・製造」から「再資源化」、そして「再び製造」へと戻る、理念としては美しいループです。

「制度の概要」で想定されている循環の流れを言い換えてみます。

  1. まず、「プラスチック使用量を合理的に削減し、プラスチック製品の長寿命化を図れる設計」に基づき、「製品を製造」することを、便宜的に最初とします。
  2. 次に、そうして作られた製品を、「販売」あるいは「サービスに付随する品目」として消費者に提供する段階です。
    この段階でも、製品提供者には、「できるだけプラスチック製品が廃棄されないように」「極力、プラスチック製品を提供しない」ことが求められることとなります。
    理念の面からだけ言えば、まことに首尾一貫しているとは言えます。
  3. そして、提供されたプラスチック製品が廃棄物となった後は、「市町村」「製造・販売事業者」「排出事業者」といった属性が全く異なる当事者により、市中から速やかに「廃棄物の回収」を行い、「再資源化」の後、
  4. 再び原材料等として「製造」に戻す

この1から4までが絶え間なく流れ続けることで、「環境に優しい」あるいは「地球にやさしい」ループを人為的に作ろうという、壮大な目論見と言えます。

「質量保存の法則」と「需要と供給のバランス」をまったく無視できるのであれば、下図のような往年の少年漫画ストーリーに見られた「理想世界が現出するッ!!」と言えるかもしれません。

著作権を侵害しない完全にセーフな方法でご登場いただいた「は●丸様」からのご指摘のとおり、
このループは、需要と供給がそこそこの規模で均衡し続けない限り早晩頓挫してしまう、現実からかなり乖離したループと思われます。

特に、「製造」と「回収」が機能するかどうかが、根本的に重要なポイントとなります。

再資源化後のプラスチック樹脂を再び製造原料に戻す製造事業者が少ない(=需要が少ない)と、頑張って回収し、再資源化したプラスチック原料の在庫ばかりが増える(=供給過多)ことになるからです。

より率直に言うならば、「プラスチック製品の需要があるかどうかがすべて」と言っても過言ではないでしょう。

「製品としての需要がある」あるいは「原材料として需要がある」状態でない限り、民間事業者には、プラスチック廃棄物を集める経済合理性がありません。

で、あるにもかかわらず、「消費者への提供削減」=「スプーンその他の有償化」に象徴されるように、法律の理念上は、「プラスチック製品の需要削減と供給削減」に舵を取ろうとしています。

このまま進むと、市場の拡大どころか、縮小均衡しか待っていないように思われます。

今のところ、国の施策面では、「供給サイド」すなわち「プラスチック廃棄物を回収する事業者」と「プラスチック廃棄物を再資源化する市区町村と事業者」を増やすことには熱心ですが、「需要創出」については、あまり真剣に論じられていないように見受けられます。

経済政策を所管する経済産業省が主務官庁であることを考えると、これは大変残念な状況と言わざるを得ません。

「法律による需要創出」とは、「再生プラスチックをもっと皆で使いましょう!」といった意識啓発系の「ゆるふわエール」ではなく、「日常品の原材料は再生プラスチックに限定するものとする」くらいの「ガチムチ規制」でないと、日本国内だけでこの理想的ループを成立させることは困難ではないでしょうか。

個人的信条としては、そのような国家主導の経済政策が望ましいとはまったく思いませんが。

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