斜め上を行く議論

一昔前までは、市町村の一般廃棄物焼却施設は、「公設公営」が当たり前でしたが、
現在は「公設民営」がかなり増え、「民設民営」も増えつつあります。

静岡県の掛川市と菊川市で構成する一部事務組合が、施設の更新時期到来を機とし、「民設民営」への切り替えを模索しているそうです。

2022年3月22日付 中日新聞 新ごみ処理施設の方向性議論 掛川で検討委初会合

 掛川、菊川両市の新たな廃棄物処理施設整備の方向性を示すための検討委員会の第一回会合が二十一日、掛川市役所であった。委員長は平井一之県環境資源協会専務理事が務め、環境政策などの専門家六人で構成する。月一回程度開催し、八月をめどに方向性をまとめる。
 両市の衛生施設組合が運営する現施設「環境資源ギャラリー」(掛川市満水)は、運用期限が二〇二四年度。組合が昨年一月に示した新施設の基本構想では、民設民営の事業方式を最優先に位置付け、処理能力を倍に上げて一般廃棄物と産業廃棄物を混焼するとしている。地元からは、産廃の受け入れなどに反対意見が出ており、両市はゼロベースで事業方式を見直すため、今回の検討委を設置した。

「産業廃棄物=危険」という、迷信にも似た恐怖を議論の出発点としているところが不安要素ではありますが、想定されるすべての情報をオープンにして、住民その他の利害関係者各自にリスク評価をしてもらうこと自体は、民主主義社会では不可欠のプロセスと言えましょう。

しかしながら、意図的に新聞が発言の一部だけを切り取って報道した可能性は排除できないものの、専門家とされる方たちの発言内容に大きな違和感がありました。

委員からは「安定的に質の良い産廃が入ってくる保証があるか疑問」などと基本構想の課題を浮き彫りにする意見が相次いだ。

産業廃棄物の焼却を引き受ける場合は、焼却事業者と排出事業者間の契約に基づき、焼却する物の種類や性状を決めることになります。

そのため、仮に、焼却できない物が搬入されてきた場合は、焼却事業者はその物の受入を拒否することが可能です。

また、「質の良い産廃」の定義がよくわかりませんが、「廃プラスチック類」を指しているのかもしれません。

だとすると、民設民営である以上、焼却事業者自身が燃焼効率を上げることを普通は重視するため、放っておいても「質の良い産廃」の比率を高める努力をします。

黙って口を開けて待っていれば済むお役所仕事ではないからです。

「入ってくる」ではなく「集める」ことが、焼却事業者本来の役割とも言えますので、議論の出発点がおかしいと感じました。

そもそも、生活系一般廃棄物の方が、電池その他の異物混入の可能性を排除できない以上、産業廃棄物と比べて圧倒的に質が悪いことがほとんどです(苦笑)。

さらに意味がわからないお言葉が

「物を燃やしてCO2(二酸化炭素)を排出する行為は、非常に高くつく社会になる」と将来的リスクへの問題提起もあった。

焼却炉の事業性や安全性について検討する場で、焼却自体を否定する発言は無駄というか、無意味なのではないでしょうか?

「燃やすか燃やさない」ではなく、「どう燃やすべきか」を議論する場で、「燃やさない方が良いんじゃね」という発言はお門違いと考えます。

焼却せずに廃棄物が消滅する時代になってほしいと私も思いますが、現代の地球の科学技術レベルでは、日々発生する生活系一般廃棄物の大部分を焼却しないと、それこそ持続不可能です。

正論にように見える発言ですが、「アナタは神を信じま~すか?」レベルの神学論争を吹っかけているような気がします。

住民の方の「産業廃棄物焼却」に感じる不安の大部分は、「産業廃棄物の運搬車両の増大」であるように思います。

それについては、先述したとおり、契約に基づく受入となりますので、事前に運搬車両台数のある程度の調整や制限は可能ですので、一般的には、住民の生活が脅かされるレベルで車両台数が増えることは無いのが通例です。

一般廃棄物のみならず、産業廃棄物も排出量が年々減少しつつありますので、ある日から運搬車両が急増するような事態は現実には考えにくいと思います(災害発生を除く)。

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