ターニングポイント

熱海市の土石流災害に関して熱海市議会が設置した百条委員会で、盛土場所の旧所有者の法人に勤めていた元社員が証言した内容が報道されていました。

2022年3月17日付 産経新聞 「「穴掘ってダンプカー投棄」熱海・伊豆山でのずさん開発目撃証言

17日行われた静岡県熱海市議会の調査特別委員会(百条委員会)での参考人招致では、昨年の大規模土石流災害で問題となった盛り土とは別にこの付近で行われていた、伊豆山地区でのずさんな開発行為の一端も明らかになった。

証言したのは、盛り土造成地の旧所有者だった不動産管理会社(神奈川県小田原市、清算済み)の元社員。平成13~14年、この会社に勤務し、盛り土付近の宅地開発に向けて擁壁工事に関与していた。

証言によると当時、搬入する土砂などの過積載で事故を起こしたダンプカーが使用不能に。これを廃棄するため、開発地付近に大きな穴を掘り、車両ごと埋めている様子を目撃した。その後、周辺住民から通報があり、近くに別の穴を掘って埋め直したという。

深さ2~3メートル、長さ4メートル、幅2メートルほどの「巨大な穴」(元社員)は周辺に複数あり、「工事で出る廃材などを捨てるための穴。そこに捨てちゃえという〝ごみ箱〟をつくった」とも明かした。

「穴掘ってダンプカー投棄」とは、日本語の文法としてはおかしな見出しですが、ラップのようなリズム感はあります(笑)。

「そこに捨てちゃえという〝ごみ箱〟をつくった」という、罪悪感をみじんも感じさせないチャラい証言とあいまり、旧所有者の杜撰さを強調する意図があったのでしょうか?

色々な不法投棄事件を自分の目で見た経験がありますが、「ダンプカー」を丸ごと土中に埋めるという大がかり、かつ無意味な不法投棄は初めて聞きました。

ダンプ等の車両の場合、わざわざ土に埋めずとも、どこかの使われない土地にひっそりと放置すれば、そのまま不法投棄ができるからです。

自社が造成し、これから宅地として販売しようとしていた土地にダンプを埋めようという発想は、一般的な思考パターンを持つ人間には思いつくことすらありません。

刑事事件としての時効はとっくの昔に成立していますので、今から不法投棄の有無が警察によって再調査されることは無さそうですが、
不法投棄を止められた唯一のタイミングがあったとすれば、「周辺住民からの通報」の時だったと思います。

通報先がどこだったのか、そして、通報を受けた行政機関の対応内容がどうだったのかはわかりません。

また、本来の所管部局である静岡県の廃棄物担当課まで通報内容が届いていたかもわかりません。

が、もしも静岡県の廃棄物担当課が通報に基づき、現地調査をしていたのであれば・・・

「深さ2~3メートル、長さ4メートル、幅2メートル」という穴を掘っている現場を見れば、「不法投棄をやる気満々」であることがすぐわかりますので、定期的にパトロールに赴く等の監視対象に加えていたはずです。

少なくとも、ちょうど平成13年から平成14年の間に私が所属していた組織においては、そうすることが当然とされており、通常の事務手順でもありました。

熱海市と静岡県間の連携ミスかもしれませんし、警察と行政間の連携ミスだったのかもしれません。

いずれにせよ、「盛り土規制法」の施行が近い将来に予定されている昨今、このような盛り土に付随した不法投棄がまた増える可能性があります。

全国の行政機関の皆様には、市町村と県との連携、警察と行政間の協力体制の確保等、この事件を教訓にして、同種の事件の再発防止策を見直していただくことを期待しております。

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