「アメリカザリガニ対策」からリサイクルを考えてみる

いつもの廃棄物関連とは違った切り口から今回は話を始めようと思います。

2022年4月14日付 環境省発表 「アメリカザリガニ対策関係資料(手引き、教材、動画)の公表について

アメリカザリガニはとても身近な生き物ですが、近年は水辺の生態系に対して非常に大きな影響を与えていることが明らかになっています。現時点において、外来生物法の特定外来生物には指定されていませんが、対策が急がれています。

アメリカザリガニは生態系被害の影響の大きさから、2015 年3月に環境省及び農林水産省が作成した「生態系被害防止外来種リスト」において、「緊急対策外来種」に位置づけられました。環境省では令和元年より、アメリカザリガニについて、文献情報の整理や聞き取り調査、専門家を交えたアメリカザリガニ対策検討ワーキンググループ(※)の開催などを行っています。また、今国会に本種を外来生物法規制対象とするための外来生物法改正案が提出されています。

このたび、これらの取組の中で得られた最新の科学的知見や専門家等へのヒアリング結果を集約し、アメリカザリガニの対策のために「アメリカザリガニ対策の手引き」、学校教育用教材、普及啓発用動画を作成しました。

国土交通省とうんこドリルのコラボレーションについては、2つ前の記事で触れたところですが、
今回の発表で初めて知りましたが、アメリカザリガニ等の外来生物関連では、環境省も普及啓発に力を入れていました。


教材サンプル:小学校3・4年生 理科 教材その1より転載

個人的には、この漫画のシニカルさを大変気に入りました(笑)。

「とある高名な博士」「とある実業家」の「とある」や発言の軽さに、制作者が込めた皮肉が感じられるからです。

「商品のポイ捨て」と「ザパパー」という擬音も同様です。

さて、今回公表された「アメリカザリガニ対策の手引き」は全部で148pもあるなかなか充実した手引き書ですが、廃棄物処理法関連の項目としては、終盤の「(10)捕獲個体の処分方法」の中で、

(a) 埋設処理
(b) 廃棄
(c) 堆肥化
(d) 食材としての活用
(e) 防除のワナ類への誘引餌として利用
(f) 教材としての活用

という6種類の方法が例示されています。

ただし重金属の濃度が高い地域に生息するアメリカザリガニは、カドミウムや、鉛、ヒ素などの重金属を体内に蓄積している恐れがあります。そのため、このような地域で捕獲されたアメリカザリガニの堆肥化や食材としての利用については、留意する必要があります。カドミウム汚染が心配される場合は分析機関での分析を依頼することも考えられます。分析費用は一検体 10,000 円以内です。

とありますので、都市部の河川や沼地で捕獲した個体を調理して食べるのは止めておいた方が良さそうですね。

逆に言うと、重金属の心配が無さそうな、水田や用水路で捕獲した個体なら、安心して食べることができそうです。

ちなみに、実際にアメリカザリガニを調理して食べた経験がある人の話では、エビと同じく「背わた抜き」が効果的とのことです。

興味がある部分に真っ先に反応してしまったため、言及の順序が後となってしまいましたが、捕獲場所での「埋設処理」は、厳密には廃棄物処理法違反です(涙)。

アメリカザリガニを捕まえた途端に殺傷し、それをポイポイ土に埋めてしまうということは、倫理的にも疑問を感じる「処分方法」ですので、厳に慎むべき方法と言えましょう。

同手引きによると、アメリカザリガニの捕食者は

とのことですので、捕獲したアメリカザリガニを餌としてそのまま利用できそうな場所は、「コイの養殖場」くらいでしょうか?

コイの養殖場は地域的にかなり偏在していますし、ザリガニがまた逃げ出すリスクを考えると、それも難しそうです。

あるいは、食材としてのウシガエル復権(?)を図り、アメリカザリガニが逃亡できない構造を持った施設でウシガエルを養殖し、餌として買い付けをする方法もあるかもしれませが、現実性はやはり低いと言わざるを得ません。

このように、ブラックバスと同様に、捕獲した後の処分方法にも制約があるため、容易にはリサイクル手法を思いつきませんが、頭の良い人が急に新たな利用用途を思いつく可能性は十分にありますので、救世主の出現に期待したいと思います(笑)。

なお、皆様ご存知のとおり、SDGsの目標15は、「陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」です。

アメリカザリガニの利用方法を見つけると、この目標15の達成に大いに役立つこととなります。

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