現場の独断か、それとも親会社の指示なのか

魚の血を未処理のままそのまま海に垂れ流すという悪徳業者も真っ青な大胆な手口で、「1970年以前の日本の画像か!?」と思ってしまったほどの、企業としては最大級のアホな環境犯罪です。

2022年7月21日付 河北新報 「サーモンの血を海に廃棄、養殖業者逮捕 廃棄物処理法違反容疑で青森県警

 青森県警は21日、水揚げしたトラウトサーモン(ニジマス)の血を海に捨てたとして、廃棄物処理法違反の疑いで、青森県深浦町のサーモン養殖業者「日本サーモンファーム」社長の男(40)=青森市=を逮捕した。

 県警は、年間で数十万匹のサーモンから出る血を海に捨てていた可能性があるとみて調べている。

 逮捕容疑は6月15日午前5時20分ごろ、青森県今別町の今別漁港で、サーモンの血が混じった廃液約200キロを海に投棄した疑い。

 県警によると、サーモンの血は産業廃棄物に当たり、汚水を微生物で浄化するなどしてから排出する必要がある。同社は血抜きした後の液体を処理する施設がなく、漁港の排水溝に廃棄していた疑いがあるという。

引用部分の最後にある「サーモンの血」が、産業廃棄物の何に該当するのか一瞬悩みました。

「サーモンの血」に直接的に言及されたテキストは無いと思われますが、
廃棄物処理法制定時に発出された古典的な通知の「昭和46年10月25日付環整45号」 に

(11) 令第二条第四号の二に掲げる産業廃棄物 「動物系固形不要物」という。と畜場及び食鳥処理場において家畜の解体等により生じた骨等の固形状の残さ物のうち不要とされるものが含まれるものであること。
 なお、家畜の解体等に伴い発生する血液等の液体の不要物は、産業廃棄物たる廃酸又は廃アルカリとして扱うこと。

という記載がありました。

魚の血のpH値は時間経過とともに変化するそうですので、垂れ流されたサーモンの血が酸性かアルカリ性のいずれになるのかはわかりませんが、「廃酸」か「廃アルカリ」のどちらかに該当するのは間違いありません。

廃液の処理というと、「中和」か「焼却」が一般的ですが、
「魚の血」を中和したところで、血の色自体は無くなりませんので、「中和」では意味が無さそうです。

となると、「焼却」か「堆肥化」その他の有効活用しかありませんが、
事業の性質上、「サーモンの血」は日々大量に発生するようですので、堆肥化(可能かどうかは存じませんが)その他の有効活用は非常に難しそうです。

「焼却」がもっとも社会に迷惑を掛けない処理方法となりますが、コストが他の方法よりも高額となるため、養殖事業を持続させるのは難しいかもしれません。

同社は血抜きした後の液体を処理する施設がなく、漁港の排水溝に廃棄していた疑いがある

「だから、不法投棄することで事業継続を目指したのか!」と、苦笑するしかありませんでした。

「最初は設備が有ったが故障したので使わなくなった」ならば、まだ理解する余地がありますが、
「最初から設備が存在しなかった」のであれば、最初から不法投棄を前提とした反社会的事業とも言うべき、企業としてはあってはならない体制です。

現場であるサーモン養殖会社の一存でそのような操業を開始したとも思えませんので、親会社の意図や指示に重大な瑕疵、あるいは環境軽視の姿勢があったのかもしれません。

魚の養殖事業という、本来なら人類全体の利益に貢献する事業に取組んでいるわけですから、このような環境軽視としか言えない杜撰な犯罪を起こした経緯を、子会社と親会社双方に真摯に反省していただきたいものです。

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