ゴミ箱じゃなくてリサイクルボックスな

社会的なインパクトが非常に大きく、一般大衆の資源リサイクルのとらえ方を変える可能性のある取組みです。

2022年9月29日付 食品産業新聞 「自販機横のリサイクルボックス 下向き投入口とオレンジ色で“ゴミ箱感”払しょくへ、業界統一仕様として順次展開

全国清涼飲料連合会(全清飲)と日本自動販売協会(JAMA)は9月29日、新機能の自動販売機横リサイクルボックスを順次展開することを発表した。10月中旬以降、業界統一仕様として、異物混入が多い都市部の繁華街などから導入する。

新機能のリサイクルボックスは、投入口を下向きにして飲料の空容器以外を入れにくくしたほか、ボックス上部面に傾斜をつけて上に置けなくするなどの工夫を行った。また、カラーは“ゴミ箱感”のイメージを払しょくするためオレンジ色を採用した。いずれも異物削減の実現を目指す試みだ。回収する空容器の品質向上を進めることで、自販機事業者や再生処理工程の業務効率を改善するとともに、ペットボトルの資源循環につなげるねらい。

※リサイクルボックスの画像は、一般社団法人全国清涼飲料連合会の発表記事から転載させていただきました。

自販機横のリサイクルボックスは、空容器を回収する目的で設置しているが、全清飲によれば、実際には空容器以外の異物の混入が約3割あり、「街のゴミ箱」になっているのが現状という。実証実験では、カフェチェーンの飲み終えたカップや食べ終えた弁当の空箱などの混入が目立っていた。

現状では、リサイクルボックスへの異物の混入率は「約3割」とのことで、結構高い割合となっています。

リサイクルボックスに捨てられているゴミとしては、「丸められたコンビニエンスストアのレジ袋に包まれた物」をよく見ます。

食べ終わったサンドイッチやおにぎりの包装を包み捨てている人たちは、
「なんて道徳的で高潔な人間なのだろう 私って」と考えているに相違ありませんが、
皆様ご存知のとおり、自販機横のリサイクルボックスに、空き缶以外の食べ残しやプラスチック包装を捨てる行為は、単なる「不法投棄」です。

「パワハラ」や「セクハラ」は、現代では当然やってはいけない行為として広く認知されつつありますが、
一昔前ならば、人でも死なないかぎりは、社会的に糾弾される事態に至ることは稀でした。

それらの行為への社会的認識が変わったきっかけとしては、
被害者の真摯な訴えの他、報道メディアが取り上げる機会が増えたという理由を挙げることもできます。

「ゴミのポイ捨てくらい」とか、「ベンダーが生ゴミも片付けてくれるから」といった、社会的に甘い認識を変えていくためには、不法投棄の犯罪性を声高に報道することも必要なのかもしれません。

しかしながら、今回のリサイクルボックスのデザイン変更は、
そのような声高な喧伝ではなく、
「デザインの力」で、人間の行動原理に訴え、可能な限り異物の混入を減らしていこうという、非常にスマートな思想です。

私個人としては、「ゴミ箱ではありません リサイクルボックスです」という遠慮がちのメッセージではなく、
「空き缶以外の混入は認めません」とか、
「ゴミの混入は犯罪行為です」といった、
少々過激な表現でも良いのではと思いましたが、「町の品性を害さない」ことも重要な価値観ですので、過激なメッセージが採用される日は来そうにありません(笑)。

廃棄物の問題については、それを捨てる人や管理する人の意識が少し変わるだけで、廃棄物の管理状態が大幅に改善することがよくあります。

無理なくその意識を改善するためには、今回のリサイクルボックスのデザイン変更のように、「デザイン思想」が非常に重要な役割を発揮します。

「廃棄物管理」に関しては、デザイナー思考ができる人が辣腕を振るう余地や必要性が、商業や工業デザイン以上にありますので、デザイナーの方のさらなる参入を期待しています。

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