数年先の地方自治を象徴する風景

沖縄の八重山毎日新聞に、気になる記事がありました。

2023年10月14日付 八重山毎日新聞 「改正条例案を可決 「適正処理困難物」値上げへ

 石垣市議会(我喜屋隆次議長)の臨時会最終日が13日あり、本会議で市がスプリング入りベッドマットなど「適正処理困難物」の処理手数料を、2000―4000円に値上げする一部改正条例案が賛成多数で可決された。条例案は当局側が一部訂正し、施行日を当初のことし12月1日から来年4月1日に延ばした。

 「石垣市廃棄物の処理及び清掃に関する条例の一部を改正する条例」は、経済民生委員会が審査中だった。13日、当局が開始日付を訂正し再審査した。

 委員の大道夏代氏は県内11市の事例をあげ、那覇市を除き、スプリング入りマットレスやソファは1個当たり200~600円で処理しているとし、「石垣は現在の400円から10倍の4000円に引き上げようとしている。あまりに高い。果たしてごみの減量化につながるのか」と価格を下げるよう申し入れ、反対の意思を示した。

 環境課の担当者は、県外自治体の料金や民間で請け負う処理費用などを参考に算出したことを説明。

 (中略)

 採決の結果、改正条例案は与党・中立系13、野党系8の賛成多数で可決された。

スプリング入りベッドマットは、「スプリング等を安全に処分できるレベルまで分別すること」が非常に困難であるため、「適正処理困難物」と呼ばれています。

単純に埋立てるだけであれば、分別の手間は掛かりませんが、それだけ埋立容量を圧迫することになるため、離島においては、そのような杜撰な方法で処分することはほぼ不可能です。

それゆえに、島内で主に人手で分解するか、島外に持ち出して分解してもらうかの二択となりますが、いずれの場合でも、廃棄物処分費はかなり高額となります。

単純にコスト面だけで考えると、島外に持ち出す場合は、

スプリング入りマットレスやソファは1個当たり200~600円で処理

は不可能であり、石垣市が想定する「4千円」でも足らないかもしれません。

言うまでもなく、「本当のコスト」と「住民が負担する処理費用」の差額は、行政が負担しています。

この費用負担の構造自体は将来においても維持されていくはずですが、石垣市で起こりつつある問題は、「地方自治体が、これまでと同様の(高割合の)コスト負担に耐えられなくなってきた」ことの現れではないでしょうか?

それを前提とするならば、インフラサービス及びインフラ整備と分類できるすべての地方自治体の行政サービスにおいて、今後同様の傾向が年々強まるものと予測できます。

実際のところ、一昔前までならば、道路の舗装に陥没が放置されることはほとんどありませんでしたが、近年では、徐々に道路整備の間隔が長くなり、場所によっては、陥没やひび割れが生じてもそのまま放置されているケースが増えているように思います。

そうなった理由は、これも言わずもがなかもしれませんが、「少子高齢化に伴う人口減少と、インフラサービスや整備に割く予算の減少」にありそうです。

2012年に高速道路のトンネル天井が落盤した事故がありましたが、2023年現在では、道路のみならず、橋脚等のインフラ設備の劣化が一斉に進んでいることも周知の事実です。

「ベッドマットレスの処分費に4千円」という金額は、市民感覚からすると、大きな痛みを伴う出費であることは事実ですが、日本、特に地方自治体が置かれた状況から考えると、全国どこの地方においても、今後は行政サービスの受益者負担費用の高額化が進むように思えます。

もちろん、その痛みをできるだけ小さく低減させることが政治の役割ではあるのですが、これまでのように「住民の痛みはゼロ」とできる財源が無い以上、我々住民側もある程度の負担増を覚悟しておく必要がありますね。

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