需要の平準化

メディアではほとんど取り上げられていませんが、個人的に興味深く思う広報が国土交通省からありました。

2024年1月24日付 国土交通省 「引越時期の分散に御協力をお願いします!

引越は、3月から4月にかけて依頼が集中します。
ピーク時期の引越を避けるなどの引越時期の分散に御協力をお願いします。

1.引越時期の分散について
 例年、引越事業においては、3月から4月にかけて依頼が集中しているため、国土交通省では、引越時期の分散に向けて経済団体等を通じて利用者の方々に呼びかけを行っているところです。
 引越時期の分散については、引越サービスの利用者の方々にも大きなメリットがあり、例えば、昨年、引越時期を最繁忙期から避けていただいた利用者の方々から、以下のような声が上がっています。

【引越サービスの利用者の方々からの声】
 『3月末の土日の引越と比べて、引越代金が安くなった』
 『会社の従業員の引越に係るコストを抑えることができた』
 『3月の最終週から引越時期をずらすことで、予約が取りやすくなった』

 例年、引越時期の分散にご協力いただいているところですが、依然として3月・4月に依頼が集中しています。
つきましては、本年の引越におかれましても、ピーク時期の引越を避けるなどのご協力・ご検討をお願い致します。

引越時期が集中していることの弊害はよくわかりますので、こうした呼びかけを続けることは非常に重要だと思います。

しかし、一事業者の立場で、現状できることはほとんど無さそうにも思えます。

やるとするならば、人事異動の時期を大幅に変更するしかありませんが、それを行うと社内のシステム全体に波及する可能性が高いと思われます。

また、大学等の進学のために引越しをする人の場合、3月末に需要が集中せざるを得ませんので、「引越時期の分散」は「言うは易く行うは難し」という印象です。

さて、引越業その他の運輸政策を論ずることが当ブログの趣旨ではありませんので、引越時期の分散についてはこれくらいで止めておきます。

国土交通省の発表を読んでまず思ったことは、「産業廃棄物処理業界でもよく聞く話だなあ」ということです。

産業廃棄物処理業界の場合は、「3月下旬から4月上旬」という決まった期間ではなく、顧客排出事業者の「決算期」ですので、一応企業ごとに分散する可能性は高いですが、それでも、「9月」や「3月」に処理依頼が急増することが多いと思います。

引越の場合も、「見積」「契約」「引越作業」と、それなりに長い期間が必要となりますが、
産業廃棄物処理委託の場合は、「見積」「契約」「収集運搬」「中間処理完了」と、より煩雑な手続きと、より長い期間が必要となることがほとんどです。

継続取引の場合は、「見積」と「契約」を省くことができますが、
「決算期となる月末までに回収、処分、そして支払いまで終わらせたい!」と、通常よりも短いスパンで処理することが求められることも多いため、急激に増える需要への対応に大わらわ、という処理企業が多そうです。

こうした状況下では、不適正処理を擁護するわけではありませんが、不法投棄や産業廃棄物管理票の虚偽報告に走ってしまう業者が出てしまう可能性があります。

「在庫品」や「サンプル品」等、排出事業者が市場に絶対に流出させたくない産業廃棄物の処理を急ぐ場合、これが現実のリスクとなり、オークションサイトで転売されたという事例が多々あります。

このように、決算期を前にした無理な産業廃棄物処理委託は、排出事業者にとっても、産業廃棄物処理業者にとっても、決して望ましいものではありません。

排出事業者側としては、「引越分散」と同じく、「計画的な産業廃棄物処理委託を心掛ける」しかなさそうですので、
受注をする側の産業廃棄物処理企業の工夫がキモとなりそうです。

「早めに依頼していただければ、料金をお安くしておきます」では、芸がありませんし、何より委託契約書記載事項の変更手続きが必要となりますので、委託料金だけは変更しないように死守したいところです(笑)。

その代わりに、「中間処理ライン投入の瞬間から、処分完了までの動画や写真をまとめた処分完了報告書を提供します」とか、「事前の日程調整は必要ですが、排出事業者立会いの下で処分します」といった、安全・確実な処分を可視化して提供する方法もあります。

最近では、「立ち会い」の代わりに、「遠隔地でもオンラインで視聴」してもらうことも可能かと思います。

ただし、筆者個人としては、単なる会社案内ではなく、産業廃棄物が確実に処分された状態までを確認する場合は、オンラインで一部始終を見届けることは困難であるため、現地での立ち会いを推奨いたしますが。

上記は、記事を書きながら思いついた一例でしかありませんので、顧客にヒアリングをする過程で、もっと良い提案がたくさん見つかることと思います。

産業廃棄物処理企業にとっては、適切な人員配置や安定的な利益確保のためにも、需要の平準化が年々重要性を増すはずです。

自社と従業員の両方に大きなメリットが発生する取組みだと思いますので、今すぐ取り組んでみてください。

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