「無い」ことはなかったはず

2024年1月23日付 NHK 「北杜産廃問題で調査委が再発防止策めぐり意見交換 山梨

北杜市に運んだ大量の建築廃材を業者が違法に保管している問題で、県の対応を検証する調査委員会が23日開かれ、情報共有や事務対応マニュアルの改善など再発防止策をめぐって意見が交わされました。

(中略)

会合では前回、関係職員に行った聞き取りで、情報共有のあり方に課題があったことや、指導や命令を出す明確な基準がないとわかったことを踏まえ、県の対応への評価と再発防止に向けた意見が交わされました。

「指導や命令を出す明確な基準がないとわかった」というのは、いささか乱暴すぎる総括に思えます。

と言いますのも、行政機関において、完全に個人の独断と意思に基づいて仕事を行う余地はほぼ無いからです。

廃棄物処理法に基づく規制を行う場合、その根拠は言うまでもなく廃棄物処理法です。

少なくとも、命令を出す根拠や基準は、廃棄物処理法で「改善命令」や「措置命令」として明文化されています。

この委員会で議論されているところの「指導の基準」とは、
「立入検査を週1回の頻度で行い、2回連続で不適切な状態を認めた場合は、書面で改善すべき点を指導する」といった、懇切丁寧なマニュアル、というよりはスクリプトを指しているのかもしれません。

たしかに、「何が違法で、何が適法か」といった、具体的な場面と判断基準をマニュアル等で例示することは、実務面では非常に重要です。

しかし、それが「箸の上げ下ろし」のような枝葉末節まで決めたスクリプトに匹敵する精度が必要かと聞かれると、「そこまでやる必要はない」と、筆者自身は思っています。

「テレアポ」や「特殊詐欺」のように、ある程度制限された状況下で、自分にとって望ましい選択に相手を誘導するという目的の場合は、精緻なスクリプトを準備することも有効かもしれませんが、海千山千の悪徳業者が相手では、事前に想定したスクリプトが役に立つとは思えないからです。

もちろん、繰り返しになりますが、悪徳業者の様々な主張や言い訳を例示し、その矛盾点を追求する方法などをマニュアルに例示することは非常に有効です。

マニュアルとスクリプトの違いは、
マニュアルには、対人関係において利用者の創意工夫を許容する余地がありますが、
スクリプトは、利用者に対し指示に従うことだけを求める
というものがあります。

もう一つ、「そんな奴おれへんやろ〜」と思ってしまった内容は、

この中で出席した委員からは県の対応について、違法性があるとは言えないとか不適切な部分もあり反省すべき点はあったなどという評価が示されました。

の「違法性があるとは言えない」という部分。

無意味な指摘だと思いました。

廃棄物処理法に基づく規制で、違法な方法で公務を行う方が難しいからです。

「痴漢目的で立入検査を行う」とか、「付きまとうために、産業廃棄物処理委託契約書の閲覧を要求する」といった、どれもかなりの変態行為しか想像できません。

おそらくは、「改善命令を出す時期が遅くなったことに違法性は無かった」くらいのニュアンスだろうとは思いますが。

ちなみに、私の公務員時代の同僚には、工場の浄化槽に立入検査に行った際、急にもよおしてきたのか、浄化槽の裏手で立小●をしようとし、工場の人から「何をやってるんですか!ここは工場の敷地内ですよ」と注意されるという剛の者がいました。

この場合は、違法性がありますので、本当にヒヤヒヤしました(汗)。

あらぬ方向に脱線してしまいましたので、本題のNHKの報道に戻りますが、

再発防止に向けて関係部署間での情報共有と連携の強化や改善命令などを出す場合の判断基準を具体化するなど事務対応マニュアルを改善すべきだなどといった意見が出されました。

「事務対応マニュアルを改善すべき」という結論には賛成です。

山梨県においてこれまで培われてきた知見や方針を、マニュアルとして明文化していただき、これまでよりもさらに高いレベルで業務に取り組むための契機としていただくことを期待しております。

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