技術革新に期待

人工衛星から地表の変化状況をモニターし、そのデータを不法投棄監視に活用するという取組みを広島県が全国初で開始したそうです。

2024年2月8日付 毎日新聞 「宇宙から廃棄物の不法投棄を監視へ 広島県が都道府県で初導入

 広島県は8日、2024年度から合成開口レーダー(SAR)を搭載した人工衛星のデータを利用し、山林などへの廃棄物の不法投棄を監視するシステムを国内の自治体で初めて導入すると発表した。これまでは住民からの通報や人力でのパトロールに頼るほかなかったが、春以降は宇宙からの目が力を貸してくれる。

 SAR衛星は、電波を地球に向けて照射し、反射を解析して地表面の様子を調べる。県は費用対効果を考えて無料で得られる地表面の観測データと比較し、不自然な変化から不法投棄の兆しをつかむシステムを作り上げた。10日ほどの周期でデータを更新し、システムが変化を知らせたら、実際に現地へ行って不法投棄を確認する仕組みだ。県の担当者は「夜間でも曇天でも問題なく監視できる。人工衛星で監視していることを広く周知し、不法投棄を未然に防ぎたい」と意気込む。

思い返すと、約20年前「航空写真で不法投棄現場を発見する!」という取組みが流行していました。

この当時、航空写真を解析するのは人間の目でしたので、未知の不法投棄現場を航空写真から発見することは至難の業だったと思います。

なにより、航空機を飛ばして地域全体をくまなく撮影する経費が非常に高いという問題がありましたので、頻繁に撮影ができないという最大の弱点がありました。

しかし、合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar)による観測の場合は、打ち上げ済みの人工衛星が収集するデータであるため、記事で触れられているとおり、比較的頻繁に更新できるという利点があるようです。

こうなると、県庁舎にいながらにして、県土全体の異変を察知することも十分可能と思われます。

さらに、SAR画像の活用は、林野庁が「合成開口レーダ(SAR)衛星を活用した山地災害判読ガイドブック」を公開しているように、既にかなり普及をしているという強みもあります。

行政機関においても人手不足が年々進むことが確実ですので、これがうまく行けば、広島県以外の全国の地方自治体にとっても朗報となりそうです。

もちろん、人間による監視活動自体は非常に重要ですが、SAR画像を活用することで、現場監視の無駄撃ちを減らすことが可能となりますので、広島県の目論見どおり、より重要な局面へ人手を割くことが可能となることでしょう。

 県は新年度予算にシステムの運用に600万円、改良などに400万円を計上。将来的には監視をシステムに任せ、人的資源は現地確認や指導などに注力させたいという。

初年度の予算は総額で1千万円となるようです。

行政用のシステム開発費としては良心的な価格設定かと思いますし、年間1千万円の投資で、おそらく数十人から数百人分の移動コストと労働時間の節約につながる可能性がありますので、大変効率的な投資と言えます。

そう考える根拠をお示しすると、
たとえば、片道1時間掛かる山間部に職員2人で出張する場合、ざっと計算すると、出張旅費やガソリン代、高速道路料金等を合算すると、5千円から1万円程度のコストが掛かります。
週3回、2人ペアで出張する場合、月にすると6~12万円、年にすると72~144万円のコストとなります。

これは出張コストだけの合算ですので、その他、職員が報告書作成に要する時間給や超過勤務手当の対応も必要となるため、実際にはさらに多額のコストが発生します。

これらの総コストに、県庁とその地方機関の数を掛け算することになりますので、初年度は別として、システム開発が落ち着く頃には運用費を上回るコスト削減効果が見込めそうです。
 

広島県の取組みが成功裏に終わり、全国に波及するようになると、不法投棄の監視が一気に効率化できそうです。

個人的に大いに期待しております!

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