起きるべくして起きた不法投棄

記録的な猛暑が続いているためか、常識的な判断すらできない人が増えているようです。

2024年7月31日 「イノシシの死骸、回収後に道ばたに捨てる 町職員が不法投棄の可能性

 福岡県苅田(かんだ)町は31日、有害鳥獣として町内で回収したイノシシの死骸1体を、町職員らが道路沿いに投棄していたと発表した。目撃した人の110番通報で発覚し、県警が事実確認を進めている。町は廃棄物処理法違反の可能性があると判断し、再発防止策を検討している。

「違反の可能性」ではなく、「完全に廃棄物処理法違反」です(涙)。

獣の死骸を道端に捨てると、猛暑の中それがひどい悪臭を放つであろうことは、大人なら容易に想像できるはずですが、あえてそれを敢行したということは、同地には「ハイエナ」や「空腹で貪欲なカラス」といった腐肉をあさる野生生物が生息しているのでしょうか?

 通常は、捕獲した時点でとどめをさし、食用に解体するか山中に埋めて処理しているという。死後時間が経ち、大きすぎて埋めることもできなかったため、男性の判断で職員が投棄したという。

前段は、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」で認められている、狩猟鳥獣の狩猟現場での基本的な処分方法についてです。

「大きすぎて埋められなかった」とありますが、スコップ等の道具があれば、箱罠設置場所付近に埋められたような気がします。

イノシシ捕獲用の箱罠の場合、断崖絶壁の岩場ではなく、森や山などの土がある場所に設置することが普通ですので、「埋められなかった」ではなく、「埋めるための作業が面倒だった」が本音だったように思われます。

もっとも、「80㎏のイノシシを苦労して車に積む」よりも、「スコップやショベルで穴を掘って埋める」方が楽そうに思えますが。

また、「回収したイノシシの死体」を不法投棄すること自体が言語道断ですが、「回収したイノシシの死体」は「一般廃棄物」であるため、「町役場内で調整をしさえすれば、円滑に町内で処分できたのでは?」と疑問に思いました。

そこで、苅田町の一般廃棄物処理計画を見てみると、
苅田町一般廃棄物処理実施計画(令和6年度)」では、
「可燃物」は第三セクターの苅田エコプラント株式会社で「固形燃料化」
「犬・猫等の死体」は「動物霊園」が挙げられています。

そのためか、

 県警行橋署によると、29日、「苅田町と書いた車で来た数人がイノシシを捨てている」と110番通報があった。署からの連絡で町が把握した。その後、死骸を隣町の動物霊園に運び、焼却した。

と、イノシシの死体も動物霊園に運び、焼却処分をしたとのことです。

廃棄物由来の固形燃料(RDF)を作る施設の場合、「イノシシの死体」などは投入してはならない禁忌品なのでしょう。

ここで気になった点は、「動物霊園」の廃棄物処理法上の位置づけです。

当該「動物霊園」には、「一般廃棄物処分業許可」「一般廃棄物処理施設設置許可」等の許可が出ている形跡がインターネット上で見出せませんでした。

福岡県が毎年公表している「ダイオキシン類の自主測定結果」の一覧にも入っていないため、廃棄物処理法とダイオキシン類対策特別措置法の規制対象外となる、かなり小規模な焼却炉と思われます。

「象さんも燃やせる焼却炉」ではなく、「ペット等の小型愛玩動物専用の小型焼却炉」といったところでしょうか。

となると、80㎏超のイノシシの死体を一回で燃やせるとは思えないので、小分けにした上で焼却をしたのかもしれません。

小規模焼却炉であれば、「一般廃棄物処分業許可」も「一般廃棄物処理施設設置許可」も不要になるため、法律の狭い隙間に存在することが可能ではありますが、イノシシの死体をバンバン持ち込まれるような事態は、動物霊園としては歓迎できない状況と思います。

 町は、職員の法令理解が足りず、捕獲動物の処理方法も確立していなかったのが原因とみて、手続きのマニュアル整備や指導・研修などの再発防止策を講じる予定。

「大型鳥獣の死体」の処分方法を予定すらしていなかった状況は、「トイレの無い新築物件に住んでいる」のと同様で、破綻することは時間の問題でした。

そのため、今回の不法投棄事件は、起きるべくして起きた不祥事と言わざるを得ません。

苅田町として今後必要な対策は、
・捕獲現場での埋設処分を徹底
・近隣で大型鳥獣の焼却可能な施設を見つけ
全関係者に周知徹底を図ることだと思います。

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