これが本当の連鎖取消

産業廃棄物処理業には非常に厳格な欠格要件が規定されていることはご承知のとおりです。

特に、産業廃棄物処理業者の経営者に欠格要件が与える心理的プレッシャーは大きなものがあります。

経営者のプライベート上の犯罪であっても、禁錮刑以上の刑罰が確定した場合は、執行猶予付きの判決でも許可取消の対象となるからです。

産業廃棄物処理業者向けのセミナーの際に質問されることとして、欠格要件の他にも「連鎖取消」があります。

「連鎖取消」とは、ある産業廃棄物処理業者(仮にA社とする)の許可が取消された場合で、
A社の役員(仮名:山田太郎氏)が別の業者(B社)でも役員を務めていた時に、
「山田太郎氏は許可取消が行われたA社の役員として欠格者になったので、同じように役員を務めるB社の許可も取消す」というものです。

産業廃棄物処理業界においては、中小企業が多い現状からも、複数の企業の役員をオーナー一家が務めているケースがよくあります。

連鎖取消が広く行われてしまうと、「役員の中に欠格者がいた」という理由だけで、本来の許可取消原因とは無関係な企業の業許可までが次々に取消されることになります。

「それでは産業廃棄物処理業者に厳しすぎる」ということで、2010年の廃棄物処理法改正により、連鎖取消の対象が緩和及び明確化されました。

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このように、連鎖取消の対象となるのは、「廃棄物処理法」第25条から第27条の罰則及び「暴力団員による不当な行為の防止に関する法律」の罰則に該当した場合だけですので、マニフェストに関する罰則(第29条)の場合は、連鎖取消の対象となりません。

そして、連鎖取消が行われた場合でも、1次連鎖の時点で連鎖取消は終了し、2次連鎖、3次連鎖といった無限に連鎖取消が行われることもなくなりました。

もっとも、これは連鎖取消に関するお話しであり、
マニフェストに関する罰則に抵触し、罰金刑が科された法人については、許可取消を免れることは不可能ですので、
産業廃棄物処理業者が廃棄物処理法を遵守した経営をしなくてはいけないことは言うまでもありません。

さて、前置きが非常に長くなってしまいましたが、ここまでの話をベースとしながら以下の事例を見ていただくと、より理解が深まると思います。

2015年7月16日付 山口県発表 産業廃棄物処理業者に対する行政処分について

※個別の処理業者の情報を公開することが趣旨ではないため、当ブログの記載では業者名を伏字にしています。

1 対象者
株式会社●●建設 

2 処分の内容
次の産業廃棄物処理業の許可の取消し

3 処分の理由等
平成27年6月に本県から、産業廃棄物収集運搬業の許可取消し処分を受けた法人の役員であった者が、法に規定する欠格要件該当者となり、その者が、産業廃棄物収集運搬業の許可を有する株式会社●●建設の役員であったため。

さらに、平成27年6月に行われた許可取消処分は下記のとおりです。

2015年6月18日付 山口県発表 産業廃棄物処理業者に対する行政処分について

1 対象者
U設備工業株式会社

2 処分の内容
次の産業廃棄物処理業の許可の取消し
(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)第14条の3の2)
○ 産業廃棄物収集運搬業(許可番号 第03506140010号)

3 処分の理由等
(1) 処分理由
対象者は、平成27年6月1日14時頃から同日15時15分頃までの間、同社敷地内において、適正な焼却設備を用いずに、同社の事業活動に伴い排出された一般廃棄物である「枯草」、「資材置き場の朽ちた柱の一部」、「事務所の書類」及び「事業場内にあった鶴嘴の柄」を合計約10キログラム焼却した。
(2) 違反条項
○ 廃棄物の焼却禁止(法16条の2)違反

U設備工業株式会社は野外焼却を行ったために、平成27年6月18日に収集運搬業の許可が取消され、
U設備工業の役員であった人が取締役を務める株式会社●●建設の収集運搬業許可が、平成27年7月16日付で連鎖取消されたものです。

野外焼却は廃棄物処理法第25条に基づく罰則の対象となりますので、野外焼却をしたU設備工業とは別法人の●●建設の許可まで問答無用で取消されました。

普通に操業をしていれば恐れる必要のない罰則ですが、山口県のように、裁判の確定を待たずに違法行為の事実だけをもって許可取消を行うことはもちろん合法ですので、産業廃棄物処理業者の方はくれぐれもご注意ください。

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